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■ 禁断のSNS、失われた輝き

「この前さ、Twitterで回ってきた動画見た？あの元K-POPアイドルのユジン、マジでヤバいらしいよ」

カフェの片隅で、親友のサオリが興奮気味に私に話しかけてきた。画面には、かつてキラキラとしたステージで輝いていたユジンの写真。しかし、その笑顔はどこか影を帯び、以前のような輝きは失われていた。

「え、ユジン？あの、あの『Starlight』のセンターだったユジン？」

私の知っているユジンは、完璧なパフォーマンスと清純なイメージで、多くのファンを魅了していた。まさか、彼女にそんな「ヤバい」噂があるなんて、信じがたい。

「そう、それ。なんか、どっきりでハプニングがあって、それで…」

サオリは小声で、SNSで流れているという衝撃的な噂の数々を語り始めた。どっきりでの「ポロリ」に始まり、一夜限りの関係を重ねる「ナンパで即ハメ」、さらに「オフパコ三昧」といった生々しい言葉が続く。そして、最後には、意外な人物との「完堕ち」があったという。

「嘘でしょ…」

私は愕然とした。かつて国民的アイドルとして崇められていた彼女が、そんな糜爛（びらん）とした状況に身を置いているなんて。

「でもさ、ユジンって、韓国でも日本でも、ずっと完璧なイメージだったじゃん？だから、そういう一面もあるんだなって、なんか人間味感じちゃって…」

サオリは、どこか同情的な、しかし興味津々な複雑な表情で言った。SNSという、光と影が混在する仮想空間は、人を一瞬にしてスターダムに押し上げることもあれば、その輝きを奪い、欲望の闇へと引きずり込むこともある。

数日後、私はユジンのSNSアカウントをこっそりと覗いてみた。更新頻度は減り、以前のような華やかな投稿はほとんどない。代わりに、物憂げな表情の写真や、意味深な詩のような文章が並んでいた。そして、コメント欄には、好奇心や欲望、そして一部の悪意のこもった言葉が飛び交っている。

「あの輝きは、どこへ消えたんだろう…」

ふと、私はユジンという存在が、SNSという鏡に映し出された、ある種の「幻想」だったのかもしれない、と感じた。完璧に作り上げられたイメージの裏側で、彼女は一体どんな孤独と戦っていたのだろうか。

ある夜、私は悪夢にうなされて目を覚ました。夢の中のユジンは、ステージの上でスポットライトを浴びているはずなのに、その顔は涙でぐしゃぐしゃだった。そして、観客席から浴びせられるのは、賞賛の声ではなく、嘲笑と侮蔑の言葉だった。

「助けて…」

震える声で、私はユジンへの複雑な感情を抱いたまま、眠りについた。

数週間後、私は偶然、街中でユジンらしき人物を見かけた。以前のような派手なメイクはせず、シンプルな黒いワンピースに身を包んでいる。その横には、控えめな雰囲気の、しかしどこか芯の強そうな女性が歩いていた。

「あれ…？」

私は思わず足を止めた。ユジンは、以前の彼女とはまるで別人だった。その表情は穏やかで、どこか安堵しているようにも見える。そして、隣の女性と楽しそうに会話を交わしている。

SNSで流れていた激しい噂とは、まるでかけ離れた光景だった。

「もしかして…」

私は、サオリが最後に話していた「地味女子で完堕ち」という言葉を思い出した。あの噂は、真実だったのだろうか。そして、その「地味女子」とは、今隣を歩いている女性のことなのだろうか。

私は、ユジンのSNSアカウントに再度アクセスしてみた。そこには、以前の陰鬱な投稿は消え、代わりに、自然の風景や、手作りの料理の写真が並んでいた。そして、コメント欄には、温かい応援のメッセージが寄せられている。

「ユジン…」

私は、複雑な感情を抱きながらも、彼女が新しい場所で、新しい幸せを見つけようとしているのだと感じた。SNSという、光と影が交錯する世界で、彼女は一度は闇に飲み込まれかけたのかもしれない。しかし、その経験を通して、彼女は本当の自分を取り戻し、新たな光を見出したのかもしれない。

「きっと、あの女性が、ユジンを救ったんだ…」

私は、ユジンの隣を歩く女性の顔をもう一度見た。彼女の穏やかな笑顔に、私はかすかな希望を見た。SNSという、時に残酷な世界で、それでも人は支え合い、光を見つけることができるのだと。

私は、カフェの窓の外を見つめながら、ユジンという一人の女性の、波乱に満ちた物語に、静かに思いを馳せていた。彼女の過去の出来事が、SNSというフィルターを通して、どのような形で人々の目に映ったのかは分からない。しかし、今、彼女が穏やかな表情で歩んでいる姿を見られたことに、私は安堵した。

そして、私たちは皆、SNSという鏡に映し出される自分自身の姿と、その裏側にある本当の自分との間で、常に揺れ動いているのかもしれない。

（了）