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■ 夢、あるいは悪夢：ファン感謝祭の夜

「まさか、本当に当選するなんて……」

田中健一は、震える手でスマートフォンを握りしめていた。画面には、文字通り夢のような告知が表示されている。「☆推しのAV女優とセックスできるファン感謝祭を開催！☆」と。その中心に輝く名前は、彼の長年の推し、泉りおん。彼女が、よりによってこの「ファン感謝祭」で、選ばれたファンと特別な時間を過ごすというのだ。

現実感のなさに、健一は乾いた笑いを漏らした。選ばれたのは、全国から集まったという幸運な男性たち。その中の一人になれたという事実が、まるで他人事のように感じられた。告知には、「好きな服装＆髪型を指定OK！」「プレイ内容も御希望に応じます！」と、さらに過激な言葉が並んでいる。胸が高鳴ると同時に、得体の知れない不安も湧き上がってきた。

当日、健一は指定された都内のスタジオへ向かった。緊張で足がもつれそうになるのを堪え、重厚なドアを開ける。そこには、想像していたよりもずっと洗練された空間が広がっていた。しかし、その空気は、現実離れした期待感と、それに伴う緊張感で張り詰めていた。

「ようこそ、田中様」

艶やかな声に振り返ると、そこには、画面で見るよりも遥かに魅惑的な泉りおんが立っていた。彼女は、柔らかな笑顔を浮かべ、健一を優しく招き入れた。

「今日は、どうぞリラックスしてくださいね。せっかくの感謝祭ですから」

彼女の言葉とは裏腹に、健一の心臓は破裂しそうだった。彼女の細やかな気遣いが、かえって緊張を煽る。まず、彼女と一緒に衣装を選び、鏡の前で様々な服を試着する。彼女は、健一の好みを丁寧に聞き出し、彼の理想の姿を一緒に作り上げていく。その過程で、自然とスキンシップが始まった。彼女の指先が健一の頬を撫で、肩に触れる。その度に、健一の身体は熱くなった。

「ふふ、田中様、顔が真っ赤ですよ？」

りおんの悪戯っぽい笑顔に、健一はさらに顔を赤らめた。そして、予想していたよりも早く、彼の身体は感情に抗いきれなくなった。

「あ……」

勃起してしまった自身の姿を、健一は恥ずかしさで直視できなかった。しかし、りおんは動じることなく、優しく、しかし的確に、健一の欲望に応えてくれた。彼女の技巧は、画面で見る以上に繊細で、健一は思わず声を漏らした。そして、その興奮は、あまりにも早く、あまりにも激しく、彼を襲った。

「あっ、ああっ！　んんっ！　うわぁぁぁ！」

緊張と興奮のあまり、健一は制御不能な絶頂を迎えてしまった。口の中に広がる熱と、自身の精子の味。それは、夢のような瞬間であり、同時に、現実との乖離に戸惑う瞬間でもあった。

「大丈夫ですか？　少し休憩しましょう」

りおんの声は、あくまで穏やかだった。健一は、荒い息遣いを整えながら、彼女の言葉に頷くしかなかった。

休憩を挟み、いよいよ「本番」が始まった。しかし、それは健一が想像していたような、二人だけの甘美な時間ではなかった。他のファンたちも、次々と部屋に入ってきたのだ。彼らの目は、欲望にギラついている。

「全員で、ぶっかけられたいんだ！」

「中出しで、孕ませてくれ！」

ファンたちの声が、スタジオに響き渡る。りおんは、戸惑った表情を見せた。しかし、その表情はすぐに、ある決意に変わる。彼女は、健一の視線に気づくと、悪戯っぽく微笑み、首元に、まるでアクセサリーのような、しかしどこか異様な首輪を装着した。そして、それに繋がれた電マのスイッチを入れた。

「きゃっ……！」

りおんの短い悲鳴が、スタジオに響く。それは、抵抗ではなく、興奮の証のように聞こえた。ファンたちは、その光景にさらに欲望を掻き立てられ、順番にりおんに近づいていく。フェラチオ、イラマチオ。彼女は、一人一人に、まるで魂を削るかのように応えていく。

「もっと、奥まで……！」

「ああっ、無理……！」

りおんの涙目になる姿が、健一の目に焼き付く。彼女の身体は、もはや彼女自身の意思ではなく、ファンの欲望のままに動いているかのようだった。コンドームを装着せず、彼女の身体に、巨大な「それ」が挿入されていく。

「あああっ！　潮吹く……！」

「もう、ダメ……！」

りおんの身体から、止めどなく溢れ出すもの。それは、彼女の歓喜なのか、それとも絶望なのか、健一には判断がつかなかった。

「濃厚精子マーキング、中出し完了！」

誰かの声が響く。そして、りおんの身体に、さらに大量の「ミルク」がぶっかけられる。それは、まるで戦利品のように、彼女の全身を覆っていく。

「顔射だ！」

次々と、男たちの「精液」が、りおんの顔へと放たれる。彼女は、もはや抵抗することもなく、ただ、その身を委ねているかのようだった。

そして、最後に、全員で記念撮影。精液にまみれたりおんと、興奮と達成感に満ちたファンたち。その光景は、まるで異様な儀式のようだった。

「ふぅ……皆様の要望を叶えられて、一安心です」

りおんの声は、かすかに震えていた。その表情には、安堵とも、諦めともつかない、複雑なものが浮かんでいた。

ファンたちは、推しのAV女優を「肉便器」にできたという事実に、満足感を覚えていた。彼らの支配欲と性欲は、一時的に満たされたのだろう。

「御好評であれば、第二回を開催したいと考えております。皆様からの御意見＆御感想をお待ちしております！」

イベントの主催者の言葉が、虚しく響く。健一は、その場に立ち尽くしていた。夢のような、しかし、どこか恐ろしい体験。それは、彼にとって、本当に望んでいたものだったのだろうか。

スタジオを出ると、夜風が肌を撫でた。まだ、りおんの熱と、あの異様な空間の残像が、健一の身体にまとわりついていた。これは、現実なのか。それとも、悪夢の続きなのか。健一は、ただ、空を見上げるしかなかった。