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「お父さん、ちょっと聞いてほしいことがあるんだけど」

リビングのソファに座る父は、手にしていたリモコンから目を離さず、「なんだ？」と気のない返事をした。私は少しもじもじしながら、隣に腰を下ろした。高校生の私に、父がまともに向き合ってくれる時間はそう多くはない。

「あのね、最近思うんだけど、韓国の女の子ってすごいよね」

父は私の言葉に眉をひそめた。「韓国の女の子？ 何の話だ。お前、また変な漫画でも読んでるんじゃないだろうな」

「漫画じゃないよ！ 本当のことなんだもん。この間、テレビで見たんだけど、韓国の女の子って顔も体も…すごく綺麗なんだよ。日本人よりずっとレベル高いって感じなんだ」

私の言葉に、父はついにリモコンを置いた。私の斜め前に座り直し、腕を組む。その表情には、明らかに面白くなさそうな色が滲んでいた。

「レベルが高い？ 具体的にどういうことだ？」

「えっとね、なんていうか…全体的に洗練されてるっていうか。スタイルだって、日本人より全然良い人が多い気がする。脚が長いとか、そういうのも含めて」

私が言葉を選ぶのに苦労していると、父はフッと鼻で笑った。「なるほどな。お前は、そういう表面的なものに憧れてるんだな」

「違うよ！ 単に、そういう事実を言ってるだけで…」

「事実？ 誰が言ってたんだ？ またネットの変な書き込みでも見たのか？」

父は私の目をまっすぐに見つめた。その視線に、私は少し圧倒された。「いや、でも…」

「お父さんはな、お前みたいな若い子には、もっと内面を磨いてほしいと思ってるんだ。見た目なんて、どうでもいいんだよ」

「でも、お父さんだって…」私は思わず口にした。「前、韓国の女優さんが出てたドラマにハマってたじゃん。あの人もすごく綺麗だって言ってたじゃん」

父は一瞬、言葉に詰まった。そして、苦々しげな表情で視線を逸らした。「あれは、ただのテレビ番組だ。それと、お前の言ってることとは全然違う」

「でも、同じじゃない…」私はさらに食い下がろうとした。しかし、父の表情を見て、ここで言い争っても無駄だと思った。私は一度深呼吸をして、少し声を落とした。「…わかった。ごめん。でも、本当に、そう思うんだ」

私は父に認められたかった。私が感じていることを、理解してほしかった。でも、父は私の言葉を、ただの子供の戯言として聞き流しているだけのように思えた。

数日後、私は学校の図書室で、偶然一冊の本を見つけた。表紙には、洗練された雰囲気を持つ韓国人女性の写真が使われていた。タイトルは「韓国女子を徹底分析！ 知的で美しい彼女たちの秘密」。好奇心に駆られ、私はその本を手に取った。

家に帰り、自分の部屋でその本を読み始めた。そこには、私が感じていた以上に、韓国の女性たちの魅力について詳細に書かれていた。彼女たちの美しさの秘密、ファッションセンス、そして知性まで。中でも、私が特に惹かれたのは、知的な韓国人美女と恋愛関係になることを夢見るような、少し背徳的な憧れを語る部分だった。

「ジャパンマネーをチラつかせてやりたい放題…」

本のページをめくりながら、私は父の言葉を思い出していた。「見た目なんて、どうでもいいんだよ」という父の言葉と、私の心の中で膨らむ、ある種の憧れとの間で葛藤していた。父には理解できないだろう。でも、私の中には、確かにそういう感情があった。

ある日、私は勇気を出して、父に相談した。「お父さん、私、韓国語を習いたいんだ」

父は少し驚いた顔をした。「韓国語？ なんでまた？」

「だって、韓国の文化にもっと触れたいし、それに、いつか韓国の、素敵な人と話してみたいと思って」

「素敵な人？ どういう意味だ？」父の声に、わずかな警戒の色が混じった。

「なんかね、知的な韓国の女の子って、すごく魅力的だと思うんだ。そういう人と、いつか会ってみたいんだ」

私は、本で読んだ「知的なコリアン美女とエッチができる夢の作品」という言葉は、もちろん口には出さなかった。でも、その言葉が、私の心の奥底で、静かに、しかし確かに、芽生えているのを感じていた。

父はしばらく考え込んでいたが、やがてため息をついて言った。「まぁ、お前の勝手だが…後で後悔するなよ」

父の言葉には、反対よりも、諦めの方が強く滲んでいた。私は、それでも嬉しかった。一歩でも、自分の夢に近づけた気がしたから。

私は韓国語の勉強を始めた。最初は単語を覚えたり、発音を練習したりと、地道な作業だった。しかし、学習が進むにつれて、韓国語の響きや、韓国ドラマのセリフの意味が理解できるようになるにつれて、私の韓国への興味はさらに深まっていった。

特に、私はある韓国人女優に魅せられていた。彼女は、ただ美しいだけでなく、知的な雰囲気と、どこか芯の強さを感じさせる瞳を持っていた。彼女が出演するドラマを見るたびに、私はますます韓国の女性たちへの憧れを強くしていった。

そんなある日、私は父に「韓国旅行に行きたい」と打ち明けた。

父は目を丸くした。「韓国旅行？ 何しに？」

「だって、ずっと勉強してきた韓国語を、実際に使ってみたいし、色々なものを自分の目で見てみたいんだ」

父は何も言わなかった。ただ、私の顔をじっと見つめている。その視線に、私は少し緊張した。

「お父さんも、一緒にどう？ 父さんも、前に韓国のドラマが好きだったじゃない」私は、父の好意を引こうと、そう言ってみた。

父は、私の言葉に何かを考えたようだった。そして、しばらくして、ゆっくりと口を開いた。「…わかった。お前が行きたいなら、付き合ってやる」

私は飛び上がって喜んだ。父が、私の夢を応援してくれるなんて、思ってもみなかったから。

韓国旅行は、私の人生観を大きく変えるものだった。ソウルの街は、活気に満ち溢れ、私は想像していた以上に、洗練された雰囲気を感じた。そして、街行く人々の、そのほとんどが、まるでモデルのようにスタイルが良く、顔立ちも整っていることに、改めて驚いた。

「ほら、お父さん！ やっぱり、韓国の女の子ってすごいでしょう？」

私は父に興奮気味に話しかけた。父は、私の言葉に何も答えず、ただ黙って周りを見回していた。その表情には、やはり、私の言葉を鵜呑みにしていないような、少し斜に構えたようなものが混じっていた。

私たちは、現地の韓国料理店に入った。店員さんは、皆若くて美しかった。特に、私たちの席を担当してくれた女性は、すらりとした手足と、ぱっちりとした二重の瞳を持ち、私が本で読んだ通りの、「知的なコリアン美女」という言葉がぴったりな女性だった。

私は、勇気を出して、その女性に韓国語で話しかけた。

「アンニョハセヨ。オジェは何を食べれば良いですか？」

彼女は、私の突然の韓国語に、少し目を丸くした。しかし、すぐに優しく微笑んで、メニューを指差しながら、流暢な韓国語で答えてくれた。

「アンニョハセヨ。今日は、プルコギがお勧めですよ。柔らかくて美味しいです」

私は、彼女の笑顔と、その発音の綺麗さに、すっかり心を奪われてしまった。父も、私の韓国語での会話に、少し驚いた顔をしていた。

食事中、私は父に、その女性のことを話した。

「お父さん、あの人、すごく綺麗だったよね。それに、ちゃんと韓国語で話せて、嬉しかった」

父は、私の言葉に、「そうか」とだけ返事をした。その声には、期待するような、あるいは感動するような色は一切なく、ただ事実を認識しているような響きだった。

旅行中、私は父に、もっと積極的に韓国の文化に触れるように促した。美術館に行ったり、ショッピングをしたり、カフェでくつろいだり。その度に、父の興味を引き出そうと、色々な話を試みた。

ある時、私たちは、少し高級なブティックに入った。父は、そこで女性用のスカーフを物色していた。私は、父の隣にいた、小柄で華奢な、しかしキリッとした目元を持つ店員さんに話しかけた。

「すみません、このスカーフ、どんなコーディネートに合いますか？」

彼女は、私の質問に少し戸惑ったような顔をしたが、やがて私の服装を見て、丁寧にアドバイスをしてくれた。彼女の言葉遣いは丁寧で、知的な印象を受けた。

私は、父にその店員さんのことを話した。「ねぇ、お父さん、あの人、ちょっと賢そうで、素敵だよね」

父は、私の言葉を聞いて、軽く笑った。「賢そう？ お前は、すぐにそういう風に言うんだな」

父のその言葉に、私は少し落ち込んだ。父は、私が感じていること、私が「素敵だ」と感じていることの、その意味合いを、本当に理解してくれているのだろうか。

そして、私は、父に、あの本に書いてあったような、少し大胆な願望を打ち明ける決心をした。

「お父さん、私ね…この旅行で、すごく思ったことがあるんだ」

父は、私の言葉を待つように、私の方を見た。

「私はね、いつか、すごく知的で、綺麗な韓国の人と、深い関係になってみたいんだ」

父は、私の言葉に、一瞬目を見開いた。そして、ゆっくりと、そして静かに、口を開いた。

「…お父さんは、お前が、誰と、どんな関係になろうと、お前の人生だから、お前が決めれば良いと思ってる。ただな…」

父はそこで言葉を切り、私の方をじっと見た。その瞳には、いつものような皮肉や、軽視するような色はなく、ただ、深い愛情と、少しの心配が宿っていた。

「…お前が、誰かを利用したいとか、誰かに利用されたいとか、そういう気持ちで関係を求めるのは、やめなさい。どんな関係でも、相手を尊重すること、それが一番大切だからな」

父の言葉は、私が予想していたものとは、全く違っていた。私は、父が私の願望を否定すると思っていた。あるいは、からかうと思っていた。しかし、父は、私の言葉を真摯に受け止め、そして、私自身の幸せを願って、そう言ってくれたのだ。

私は、父の言葉に、胸がいっぱいになった。いつの間にか、私の目からは、涙が溢れていた。

「…うん、ありがとう、お父さん」

私は、父の言葉を、しっかりと心に刻み込んだ。私が憧れる、知的で美しい韓国の女性たち。そして、私が心に抱く、その女性たちとの関係性。それらは、決して誰かを傷つけたり、利用したりするものであってはならない。それは、互いを尊重し、共に喜びを感じ合える、そんな、温かい関係でなければならないのだと。

父は、私の涙を、何も言わずに、ただ静かに見守ってくれていた。その静けさの中に、私と父の間に、これまでなかった、新しい理解の扉が開かれたような気がした。

旅行の最終日、私たちは、空港へ向かうリムジンバスに乗っていた。窓の外には、ソウルの街並みが、静かに流れていく。父は、窓の外を見ながら、少しだけ、感慨深げな表情をしていた。

「韓国の女の子って、やっぱりレベル高いよ。でも、お父さんが言ってたみたいに、見た目だけじゃないんだね」

私は、父にそう話しかけた。父は、私の言葉に、小さく頷いた。

「そうだな。お前の言う通りだ」

父のその言葉に、私は、これまで感じていた、父への反発や、理解してもらえないことへの寂しさが、全て溶けていくのを感じた。

私は、父に、感謝の気持ちを伝えようとした。しかし、言葉が出てこなかった。ただ、父の肩に、そっと頭を寄せた。父は、私の頭を、優しく撫でてくれた。

私と父の、韓国への旅は、終わろうとしていた。しかし、私の心の中には、新しい感情と、新しい希望が、確かに芽生えていた。私は、いつか、自分が本当に望む形で、韓国の女性たちと心を通わせられる日が来ることを、信じていた。そして、そのために、私は、これからもっと自分を磨いていこうと思った。外見だけでなく、内面も、そして、誰からも尊敬されるような、強く、優しい女性へと、成長していこうと。

父の温かい手が、私の頭を撫でる。私は、その温もりを感じながら、静かに目を閉じた。私の心には、どこか、懐かしいような、そして、これから始まる未来への期待のような、不思議な感情が、満ち溢れていた。