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## 罪の蜜 - ある家庭教師の記録

古びた木造アパートの一室、蛍光灯の光が僅かに漏れ出す窓辺に、若き家庭教師、高志は立っていた。24歳、大学院生。研究室に籠る日々を少しでも潤そうと始めたアルバイトだったが、最近は別の意味で生活を揺さぶられていた。

それは、サラさんとサキさん、二人の人妻との出会いから始まった。

サラさんは、高志が最初に教え始めた生徒、ユウキ君の母親だった。24歳という若さに似合わぬ落ち着いた雰囲気、いつも控えめな微笑みを浮かべている。しかし、その奥には何か秘めた情熱のようなものが感じられた。初めて会った時、彼女は丁寧な言葉遣いで、息子の学習状況や悩みを聞いてきた。高志は、教師として真摯に答えようとしたが、視線がふと彼女の胸元に吸い寄せられるのに気づき、慌てて目を逸らした。白のニットから微かに覗く、豊満な膨らみ。育ちの良さを感じさせる上品な佇まいとのギャップに、高志は戸惑った。

一方、サキさんは、近所に住む友人の紹介で教えることになった、アキト君の母親だった。27歳、スラリとした長身に、豊満なバストと引き締まったウエスト。いつも明るく、誰とでも打ち解けられる社交的な性格。彼女は初めて会った時から、高志に遠慮なく話しかけてきた。「先生、若いのに偉いわね。うちの子、本当に手がかかるのよ」と、笑いながら愚痴をこぼす姿は、どこか親しみやすかった。高志は、彼女の飾らない笑顔に、次第に心を惹かれていった。

ユウキ君とアキト君の勉強を見るうちに、高志は自然とサラさんとサキさんと親しくなっていった。サラさんは、いつも温かいお茶とお菓子を用意してくれ、高志が疲れていると、さりげなく肩を揉んでくれた。その柔らかい感触に、高志はドキドキした。サキさんは、高志に夕食を振る舞ってくれることもあった。手料理はどれも美味しく、賑やかな食卓は、一人暮らしの高志にとって、どこか温かい家庭の味だった。

ある日、ユウキ君のテストの結果が悪かった。サラさんは、申し訳なさそうに高志に頭を下げた。「先生、すみません。ユウキ、なかなか勉強に集中できなくて…」高志は、サラさんの悲しそうな表情を見て、何か力になりたいと思った。「サラさん、気にしないでください。これから一緒に頑張りましょう」と、励ますように彼女の肩に手を置いた。その瞬間、サラさんの体がビクッと震えた。高志は慌てて手を離したが、彼女は俯いたまま何も言わなかった。

その夜、高志はサラさんのことを考えて眠れなかった。彼女の繊細さ、優しさ、そして、あの時感じたかすかな震え。高志は、自分の中に芽生え始めている、教師として許されない感情に気づき、愕然とした。

数日後、サキさんの家で、アキト君の誕生日会が開かれた。高志も招待され、賑やかなパーティーに参加した。サキさんは、いつにも増して美しく、楽しそうに笑っていた。会の終盤、サキさんが高志に近づいてきた。「先生、ちょっと手伝ってくれない？」と、耳元で囁く声は、いつもより甘く、どこか妖艶だった。

サキさんに連れられて、台所へ向かう。洗い物を手伝っていると、サキさんが突然、高志の腕に触れてきた。「先生、いつもありがとうね。アキトのこと、本当に良く見てくれて」と、感謝の言葉を口にするサキさんの視線は、高志をまっすぐ見つめていた。その瞳に、高志は吸い込まれそうになった。

気がつくと、高志はサキさんを抱きしめていた。彼女の柔らかい体が、高志の胸に密着する。サキさんは、抵抗することなく、高志の肩に手を回した。二人は、しばらくの間、言葉もなく抱きしめ合っていた。

その瞬間、背徳感と快楽が、高志の心を満たした。教師として、人として、絶対に許されない行為。しかし、サキさんの温もり、甘い香りに包まれ、高志は理性も自制心も失っていた。

サラさんの、あの日の震え。サキさんの、甘い誘惑。二人の人妻との禁断の関係は、高志の人生を狂わせていく。

数日後、高志はサラさんの家を訪れた。ユウキ君の勉強を見ている間、サラさんはいつもより落ち着かない様子だった。時折、高志の顔をちらりと見て、すぐに目を逸らす。高志は、サラさんの気持ちを確かめようと、思い切って話しかけた。「サラさん、最近、何か悩み事がありますか？」

サラさんは、戸惑った表情で、首を横に振った。「いいえ、何もありません。ただ、先生に、感謝しているだけです」と、小さな声で答えた。

高志は、サラさんの言葉を信じることができなかった。彼女の瞳の奥には、何か隠された感情が渦巻いているように見えた。高志は、思い切ってサラさんに告白した。「サラさん、あなたのことが、好きです」

サラさんは、驚いた表情で、高志を見つめた。そして、ゆっくりと口を開いた。「先生、あなたは、良い人です。でも、私は…」

サラさんは、言葉を途中で止めて、俯いてしまった。高志は、彼女の反応を見て、自分の気持ちが一方通行だったことを悟った。

その夜、高志はサキさんに電話をかけた。サキさんは、すぐに電話に出てくれた。「先生、どうしたの？元気がないみたいだけど」と、心配そうに尋ねるサキさんの声を聞いて、高志は涙がこぼれそうになった。

高志は、サキさんに全てを打ち明けた。サラさんに告白したこと、そして、彼女に拒絶されたことを。サキさんは、黙って高志の話を聞いてくれた。

全てを話し終えた後、サキさんは、静かに言った。「先生、あなたは、優しい人ね。でも、私たちは、間違っている」

サキさんの言葉を聞いて、高志は全てを失ったような気がした。サラさんにも、サキさんにも、拒絶された高志は、絶望の淵に突き落とされた。

高志は、全てを捨てて、この街から逃げ出すことを決意した。家庭教師のアルバイトを辞め、大学も休学した。そして、誰にも告げずに、故郷へと帰っていった。

数年後、高志は、別の街で、新しい生活を始めていた。過去の過ちを忘れ、教師として、真面目に働いていた。ある日、高志は、街で見覚えのある女性を見かけた。それは、サラさんだった。

サラさんは、一人で公園のベンチに座っていた。高志は、声をかけようか迷ったが、結局、声をかけることができなかった。サラさんは、高志に気づくことなく、公園を後にした。

サラさんの姿を見送った後、高志は、胸が締め付けられるような思いだった。過去の過ちは、決して消えることはない。しかし、高志は、過去と向き合い、新しい人生を歩んでいこうと決意した。

その夜、高志は、久しぶりにサキさんに電話をかけた。サキさんは、すぐに電話に出てくれた。「先生、久しぶりね。元気にしてる？」と、明るい声で尋ねるサキさんの声を聞いて、高志は安堵した。

高志は、サキさんに近況を報告した。サキさんは、高志の話を聞いて、喜んでくれた。「先生、頑張ってるのね。私も、頑張るわ」と、力強く言うサキさんの声を聞いて、高志は、勇気づけられた。

高志は、サキさんと電話を切った後、窓の外を見た。星空が、美しく輝いていた。高志は、新しい人生を、力強く歩んでいこうと決意した。過去の過ちを胸に、未来へと。