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**注意：この小説は、元の文章が示唆するような行為を肯定・推奨するものではありません。倫理的に問題のある行為を美化する意図はなく、あくまでフィクションとして創作されたものです。**

## 山手線の午後三時

午後の陽射しが、目白駅前のロータリーに降り注いでいた。僕は、日課と化した「人妻観察」のために、いつものカフェのテラス席に陣取っていた。もっとも、観察と言っても、ただぼんやりと行き交う人々を眺めているだけだ。今日の獲物は…いや、今日のターゲットは…いや、やっぱり「気になる人」を探す、という表現が一番しっくりくる。

数日前から、妙に心惹かれる女性がいた。ベージュのトレンチコートを上品に着こなし、控えめな笑顔が印象的な、いかにも「清楚」という言葉が似合う人妻だ。彼女は毎日同じ時間、駅前の花屋で花束を買っていく。その花束が誰のために、どんな想いを込めて選ばれているのか、想像するだけで胸が締め付けられるような気がした。

正直に告白すると、僕は過去に何度か、似たような「ナンパ」まがいの行為を試みたことがある。しかし、結果は惨憺たるものだった。チャラい言葉は空回りし、相手は警戒心をむき出しにする。SNSで知り合った女性と一度だけ食事に行ったことがあるが、会話は弾まず、二度と会うことはなかった。

僕は、自分が「ナンパ」に向いていないことを痛感していた。だからこそ、今回の「ターゲット」に対しては、慎重にならざるを得なかった。彼女に近づくための、完璧なシナリオを練り上げる必要があった。

まずは、彼女のライフスタイルを把握することから始めた。花屋で働く店員に話を聞き、彼女が週に数回、同じ時間帯に店を訪れることを知った。次に、彼女が住んでいるマンションを突き止めた。駅から徒歩10分ほどの、閑静な住宅街にある高級マンションだった。

そして、ある日。僕は、彼女が花束を持ってマンションに入っていくのを見計らって、後を追った。エントランスで、彼女が落としたハンカチを拾い上げ、「落とされましたよ」と声をかけたのだ。

彼女は驚いた表情で振り返り、「ありがとうございます」と微笑んだ。その笑顔は、想像以上に美しかった。

「あの…」と、僕は言葉を続けた。「いつも素敵な花束を買っていらっしゃいますね。きっと、愛情深い方なのでしょうね」

彼女は少し戸惑ったように目を伏せ、「そんな…」と小さく呟いた。

「もしよろしければ、今度、お茶でもご一緒しませんか？ あなたのお話をもっと聞いてみたいんです」

彼女はしばらく考え込んだ後、意を決したように顔を上げた。「…いいですよ。でも、お茶だけですよ」

僕は心の中でガッツポーズをした。第一段階は成功だ。

数日後、僕たちは駅前のカフェで待ち合わせをした。彼女の名前は美咲（仮名）という。30代前半で、結婚して5年になるそうだ。夫は会社員で、仕事が忙しく、あまり家にいないという。

美咲は、とても控えめな女性だった。自分のことをあまり話そうとせず、僕の質問に答える時も、どこか遠慮がちだった。

僕は、焦らず、ゆっくりと距離を縮めていくことにした。美咲の好きな音楽や映画の話を聞き、共通の趣味を見つけようと努力した。彼女が悩んでいることや不安に思っていることに耳を傾け、共感の言葉を贈った。

数週間後、美咲は少しずつ心を開いてくれるようになった。彼女は、結婚生活に不満を抱えていることを打ち明けてくれた。夫は仕事ばかりで、会話もなく、まるで空気のような存在になっているという。

「私、もしかしたら、寂しいのかもしれません」

美咲の言葉を聞いて、僕はチャンスだと思った。僕は、美咲の寂しさを埋められるのは自分しかいない、と信じていた。

僕は、美咲に積極的にアプローチを始めた。毎日のようにメッセージを送り、週末には食事に誘った。美咲も、まんざらではない様子だった。彼女は、僕と一緒にいると心が安らぐと言ってくれた。

そして、ある夜。僕たちは、バーで飲んでいた。美咲は少し酔っていて、普段よりも饒舌だった。彼女は、夫に対する不満や、将来への不安を、とめどなく語り続けた。

僕は、美咲の手をそっと握った。彼女は少し驚いたように僕を見たが、手を振り払うことはなかった。

「美咲さん…」と、僕は囁いた。「あなたは、もっと幸せになるべきです。僕が、あなたを幸せにします」

美咲は、涙目で僕を見つめ返した。そして、小さく頷いた。

その夜、僕たちはホテルに行った。

翌朝、美咲は後悔の念に苛まれていた。彼女は、自分がしてしまったことを恥じ、泣き崩れた。

僕は、美咲を優しく抱きしめた。「大丈夫だよ。僕がいるから」

美咲は、僕の胸の中で泣き続けた。

それから数週間後、美咲は夫に離婚を切り出した。夫は、美咲の突然の告白に戸惑い、激しく抵抗した。しかし、美咲の決意は固かった。

離婚が成立した後、美咲は僕のマンションに引っ越してきた。僕たちは、一緒に暮らし始めた。

しかし、僕たちの生活は、決して幸せとは言えなかった。美咲は、常に過去の出来事に囚われていた。彼女は、自分が不倫をしたこと、夫を傷つけたことを、深く後悔していた。

僕は、美咲を慰め、励まし続けた。しかし、彼女の心の傷は、なかなか癒えることはなかった。

ある日、美咲は僕に言った。「私、やっぱり間違っていたんだと思う。あなたと出会わなければ、こんなことにはならなかったのに…」

僕は、何も言えなかった。僕は、美咲を幸せにしたかっただけだった。しかし、結果として、彼女を苦しめてしまった。

数ヶ月後、美咲は僕の元を去っていった。彼女は、故郷に帰り、両親と一緒に暮らすことにしたという。

僕は、一人になった。

僕は、自分のしてしまったことを深く後悔した。僕は、美咲の人生を狂わせてしまった。僕は、罪を犯したのだ。

僕は、もう二度と、同じ過ちを繰り返さないと誓った。僕は、人を傷つけるような行為は、決してしないと決めた。

僕は、カフェのテラス席から立ち上がり、駅前のロータリーを後にした。午後の陽射しは、相変わらず降り注いでいたが、僕の心は、どんよりと曇っていた。

山手線の電車が、駅に滑り込んできた。僕は、その電車に乗り込んだ。僕は、どこへ向かうのだろうか。僕は、これからどうすればいいのだろうか。

答えは、まだ見つからない。ただ、僕は、前に進むしかないのだ。過去の過ちを胸に刻み、新たな一歩を踏み出すしかないのだ。

山手線の電車は、ゆっくりと走り出した。僕は、窓の外を眺めた。景色は、どんどん変わっていく。僕の人生も、きっと変わっていくのだろう。

そう信じて、僕は、未来へと向かって歩き出す。