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## 温泉旅館の熱帯夜

窓の外は、しとしとと雨が降っていた。車のワイパーが忙しなく動き、景色を歪ませる。助手席に座る美咲は、どこか上の空だった。

「退屈？」

ハンドルを握る和也が声をかける。美咲はハッとして、慌てて笑顔を作った。

「ううん、そんなことないよ。雨の景色も、たまにはいいなって思って」

和也は少し疑わしげな目を向けたが、すぐに運転に集中した。結婚して５年。子供はいない。穏やかな夫婦生活を送っているはずだった。少なくとも、表面上は。

美咲の心は、嵐の海だった。夫とのセックスレスは、もう２年になる。理由は分かっている。彼は仕事で疲れ切っていて、性的なことに興味を失ってしまったのだ。何度か話し合おうとしたが、「疲れているだけだから」と軽くあしらわれてしまう。美咲は、まるで自分が存在しないかのように感じていた。

そんな時、昔の恋人だった和也から連絡が来た。彼は独身で、今は地元の小さな会社を経営しているという。久しぶりの再会で、二人の間に昔と変わらない熱いものが蘇った。そして、今回の温泉旅行が決まったのだ。

旅館に着くと、雨はますます強くなっていた。ロビーでチェックインを済ませ、部屋へと案内される。仲居さんが部屋を出ていくと、和也は美咲を抱きしめた。

「美咲…会いたかった」

彼の低い声が、美咲の耳をくすぐる。震える声で「私も…」と答えるのが精一杯だった。和也は美咲の顎を掴み、顔を近づけた。熱い吐息が混じり合い、唇が触れ合う。

「もう、我慢できない…」

和也の言葉と同時に、激しいキスが始まった。美咲は抵抗することもなく、彼の腕の中に身を委ねた。乾いた大地が水を求めるように、彼の熱を貪り求めた。

長いキスが終わり、二人は息を切らしていた。和也は美咲の首筋に顔を埋め、甘く囁いた。

「美咲…綺麗になったな」

その言葉に、美咲の理性は完全に崩壊した。二人は服を脱ぎ捨て、熱い肌を重ね合わせた。

部屋に備え付けられたローテーブルの上に、美咲は手枷と足枷を見つけた。

「これ、何？」

和也はニヤリと笑った。

「サプライズだよ。君を、もっと楽しませてあげたくて」

美咲は戸惑った。拘束されるなんて、経験したことがない。少し怖い気持ちもあったが、それ以上に期待が膨らんだ。

和也は手際よく美咲を手枷と足枷でベッドに拘束した。逃げ場のない美咲は、彼の動きをただ見つめることしかできない。

「動けないって、ドキドキする…」

美咲の言葉に、和也は満足そうに頷いた。彼は美咲の体中にキスを落とし、ゆっくりと指で愛撫を始めた。敏感な場所を的確に刺激され、美咲は声を上げて喘いだ。

「和也…お願い…」

焦らすようにゆっくりと時間をかける和也に、美咲は何度も懇願した。彼女の欲情が最高潮に達した時、和也はついに彼女の中に侵入した。

激しいピストン運動が部屋に響き渡る。美咲は必死に快感に耐えようとしたが、それは無駄だった。何度も何度も絶頂に達し、意識が遠のいていく。

和也は美咲の上で激しく腰を振った。彼女の顔を覗き込み、愛おしそうに名前を呼ぶ。

「美咲…美咲…愛してる」

美咲もまた、彼の名前を呼びながら叫んだ。二人の間には、言葉では言い表せないほどの熱い感情が渦巻いていた。

しばらくして、ようやく二人は静けさを取り戻した。美咲はベッドに横たわり、天井を見つめていた。和也は彼女の隣に寄り添い、優しく髪を撫でた。

「どうだった？楽しかった？」

美咲は恥ずかしそうに顔を赤らめた。

「うん…すごく…」

その言葉に、和也は満足そうに微笑んだ。彼は美咲の左手を取り、薬指にはめられた結婚指輪に目をやった。

「これ、外してもいいんだよ」

和也の言葉に、美咲はドキッとした。指輪を外すということは、夫との関係を完全に断ち切ることを意味する。躊躇する美咲を見て、和也はそっと指輪を外した。

「美咲…君は自由だよ。誰にも縛られる必要はないんだ」

和也の言葉に、美咲は涙が溢れてきた。彼女は夫に縛られ、長い間自由を奪われていたのだ。

「ありがとう…和也…」

美咲は和也に抱きつき、感謝の気持ちを伝えた。

その夜、二人は何度も体を重ね合わせた。拘束されたり、騎乗位になったり、顔を舐められたり。様々な体位を試し、お互いの肉体を貪り合った。美咲は完全に獣と化し、和也の腕の中で何度も絶頂を迎えた。

翌朝、美咲は清々しい気分で目覚めた。体は疲れていたが、心は満たされていた。まるで生まれ変わったかのような気分だった。

朝食後、二人は旅館をチェックアウトした。車の中で、美咲は自分の左手を見つめた。薬指には、指輪の痕が残っていた。

「どうするの？これから」

和也が尋ねた。美咲は少し考え、決意を込めて答えた。

「離婚するわ。もう、あの生活には戻れない」

和也は嬉しそうに美咲を抱きしめた。

「僕が、君を幸せにする」

美咲は和也の言葉を信じた。彼女はもう、過去の自分とは違う。自分の気持ちに正直に生きることを決めたのだ。

旅館から帰宅した後、美咲はすぐに離婚の準備に取り掛かった。夫は驚き、必死に引き止めようとしたが、美咲の決意は固かった。

数ヶ月後、美咲は無事に離婚を成立させた。そして、和也と一緒に新しい生活を始めた。二人は小さなアパートで暮らし、毎日愛を確かめ合った。

かつてはセックスレスに悩んでいた美咲だが、今は和也との情熱的な日々を送っている。彼女は自分の幸せを掴み、新しい人生を歩み始めたのだ。

あの温泉旅行は、美咲にとって人生のターニングポイントだった。不倫という背徳感はあったものの、彼女はそこで自分の気持ちに正直になることができた。そして、愛と自由を手に入れたのだ。

窓の外は、今日も雨が降っている。しかし、美咲の心は晴れ渡っていた。彼女は和也の腕の中で、幸せそうに微笑んだ。