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## 密室の甘い誘惑

ビジネスホテルのビジネスツインの一室。照明は落とされ、アロマオイルの香りが微かに漂っていた。窓の外には、都会のネオンが宝石のようにきらめいている。部屋の中央には、ふかふかのマッサージベッドが置かれ、その上には柔らかなタオルが敷かれている。

「失礼します。」

ドアが開くと、長身の女性が入ってきた。艶やかな黒髪は肩にかかり、整った顔立ちはどこか影を帯びている。手にはアロマオイルのボトルが数本。彼女は、この部屋に宿泊している男性客、田中健一氏のために派遣されたエステティシャン、佐藤陽子だった。

陽子は、30代半ば。専業主婦だったが、夫の転職を機に経済的な不安から、以前から興味のあったエステの道に進んだ。しかし、現実は甘くなかった。エステティックサロンで働く傍ら、副業として出張エステの依頼も受けていた。特に、ビジネスホテルでの出張エステは、単価も高く、比較的短時間で稼ぐことができたため、彼女の生活を支える重要な収入源となっていた。

「はじめまして、佐藤です。本日はよろしくお願いいたします。」

陽子が丁寧に挨拶すると、田中氏はニヤリと笑って応じた。

「こちらこそ。待ちわびてましたよ。」

田中の目は、陽子の全身を値踏みするように這い回る。その視線に、陽子はわずかに不快感を覚えた。しかし、プロとして、動揺を見せるわけにはいかない。

「それでは、早速始めさせていただきます。ご希望はございますか？」

「いや、お任せしますよ。君の好きなように。」

田中は、陽子の胸元に視線を固定したまま言った。陽子は、田中が単なるリラクゼーションを求めているのではないことを察していた。出張エステの依頼者の中には、エステティシャンを性的な対象として見ている者がいるという噂は、彼女も耳にしていた。特に、既婚者の女性エステティシャンは、未婚の女性よりも性に奔放で、誘惑しやすいという話まで。

「まずは、お背中から失礼します。」

陽子は、平静を装い、田中氏の背中に手を伸ばした。滑らかな肌に触れると、田中氏は小さく息を漏らした。陽子は、指先で筋肉の緊張をほぐしていく。しかし、田中の呼吸は次第に荒くなり、背中を撫でる陽子の手に、熱っぽい視線が注がれるのを感じていた。

「…田中さん、深呼吸をしてくださいね。」

陽子は、あくまでも施術に集中するように努めた。しかし、田中の体温は異常に高く、陽子の指先から伝わる熱が、彼女の肌をかすかに火照らせる。

「陽子さん…君、綺麗だね。」

田中が、耳元で囁いた。その声は、掠れており、明らかに興奮していた。陽子は、思わず手を止めた。

「ありがとうございます。でも、今は施術に集中させてください。」

「施術なんて、どうでもいいんだよ。俺は、君と…。」

田中の手が、陽子の腰に回り込んできた。その強引な仕草に、陽子は抵抗しようとした。しかし、田中は力強く彼女をベッドに押し倒した。

「…っ！離してください！」

陽子は必死に抵抗するが、田中の力は圧倒的だった。衣服が乱され、部屋の空気が熱を帯びていく。陽子は、夫とのセックスレスに悩んでいた。寂しさや虚しさから、時折、この出張エステの仕事に、どこか倒錯した魅力を感じていた自分を責めた。しかし、今、目の前で繰り広げられている状況は、彼女の想像を遥かに超えていた。

「抵抗しても無駄だよ。俺はお前が欲しかったんだ。」

田中の顔が、陽子の顔に迫ってくる。陽子は、目を閉じた。抗えない。この密室で、彼女は完全に一人だった。夫に連絡することも、助けを求めることもできない。

やがて、抵抗は虚しく、陽子は田中の激しい求めに身を委ねてしまった。それは、彼女が望んだものではなかった。しかし、日頃の満たされない心と、目の前の圧倒的な力に、抗いきれなかった。

（…私、どうして…。）

後悔と、そして微かな罪悪感が、陽子の心を締め付けた。

その頃、ホテルの廊下では、巧妙に仕掛けられた隠しカメラが、この部屋の全てを捉えようとしていた。それは、この業界の闇に潜む、ある人間たちによって仕掛けられたものだった。彼らは、人妻エステティシャンの「緩さ」を嗅ぎつけ、このような悪質な行為を期待していた。

カメラは、陽子の涙、そして抗いながらも次第に崩れ去っていく抵抗の意志を、克明に記録していた。そして、やがて訪れる、禁断の行為、中出しまでをも。

密室の中で繰り広げられる、欲望と堕落の物語。それは、誰にも知られることのない、一人の女性の、あまりにも悲しい秘密の記録となるはずだった。しかし、この記録が、一体誰の手に渡り、どのような目的で利用されるのか、その運命は、まだ誰にも知る由もなかった。