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## 砂塵に溶けた夏、そして止まらない鼓動

梅雨明けの太陽が容赦なく照りつける昼下がり。ゴルフ練習場のネットに吸い込まれるようにボールが飛んでいく音だけが、アスファルトの熱気と相まって、私の耳に響いていた。いつものように、汗ばんだ額をタオルで拭いながら、私はクラブを握り直す。今日のレッスンも、あの人との時間のために。

「いい球だ、ハルカさん！」

コーチの声に、私は思わず笑みをこぼす。彼の名は、拓也。20代後半、爽やかな笑顔と、的確なアドバイスで、私のゴルフライフに光を灯してくれた存在だ。いや、光を灯してくれたのは、ゴルフだけではなかったのかもしれない。

レッスンが終わる頃には、私の体は心地よい疲労感に包まれていた。額には汗、首筋にはうっすらと汗が滲み、ゴルフウェアは肌に張り付いている。この、汗ばんだ状態こそが、私にとってある種の「合図」なのだ。

「今日もありがとうございました、拓也さん」
「いや、こちらこそ。ハルカさんの成長は目覚ましいですよ」

拓也は、いつものように爽やかに微笑む。その笑顔を見るたびに、私の心臓は小さく跳ねる。彼は、私の夫・健一とは全く違うタイプだった。健一は、仕事一筋で、寡黙。愛情表現も控えめで、私を「妻」として大切にしてくれるけれど、それ以上の感情の起伏はあまり見せない。それに比べて、拓也は、情熱的で、私の些細な変化にも気づいてくれる。

「あの、もしよかったら、この後、一杯どうですか？」

私の口から、思わずそんな言葉が飛び出した。拓也は少し驚いた顔をしたが、すぐににこやかに頷いてくれた。

「いいですよ。どこか、いいお店知ってます？」

彼との約束が、私の日常に小さな波紋を広げていく。練習場のロッカーで、汗で肌に張り付いたウェアを脱ぎながら、私は自分の体の変化に気づく。ゴルフで程よく火照った肌。そして、拓也の言葉を思い出すたびに、体の奥底から湧き上がる、抑えきれない熱。

「おしゃぶり妻」

健一が、冗談めかして私をそう呼んだのは、結婚して数年経った頃だった。彼の愛情表現に、私はまるで子供のように、甘え、欲しがる。彼の温かい手に包まれるたびに、安心感と同時に、もっと、もっと、という欲求が生まれてくる。しかし、健一との関係は、穏やかで、平和ではあったけれど、あの、胸が締め付けられるような、熱い衝動には、あまり満たされることがなかった。

「ハルカさん、顔色がいいですね。ゴルフでリフレッシュできたみたいで」

居酒屋で、ビールを片手に拓也が言う。彼の視線が、私の顔をなぞる。その視線に、私はドキドキしながら、さらにビールの喉を鳴らした。

「ええ、おかげさまで。拓也さんのレッスンのおかげです」
「それは嬉しいな。でも、もっと、ハルカさんの魅力を引き出せるように、頑張りますよ」

彼の言葉は、ゴルフのことだけを指しているのではない、と、私は感じ取っていた。そして、その言葉に、私の心はさらに熱くなる。

「あのね、私…」

言葉にしようとして、喉が詰まる。何を言えばいいのだろう。私の、この、言葉にできない衝動を。拓也は、じっと私の目を見つめている。その瞳には、期待と、そして、私と同じような熱が宿っているように見えた。

「…私、最近、なんだか、体の調子がいいんです。ゴルフをしていると、すごく、元気になれるというか」
「それは、いいことじゃないですか。でも、その…「元気」っていうのは、ゴルフだけじゃなくて？」

拓也の視線が、私の唇に落ちる。その瞬間、私の心臓は、激しく鼓動を打った。まるで、夏の太陽に焼かれたアスファルトのように、熱く、じりじりと。

「…そう、かもしれません」

私の声は、自分でも驚くほど掠れていた。拓也は、ゆっくりとグラスを置き、私の手元に伸ばしてきた。彼の指先が、私の指先に触れる。その瞬間、電流が走ったような感覚に、私は息を呑んだ。

「ハルカさん…」

彼の声が、すぐ耳元で響く。その声には、抑えきれない熱がこもっていた。私は、彼の顔を見上げる。彼の瞳は、もう、私を誘うように、揺らめいていた。

「私、なんだか、わからなくなってきたんです…」

私の言葉に、拓也は優しく微笑んだ。そして、彼の指先が、私の指先を、ゆっくりと、なぞる。その感触に、私の体は、まるで意思を持っているかのように、熱を帯びていく。

「大丈夫ですよ。僕が、いますから」

彼の言葉は、私を包み込むように、優しく、そして力強かった。私は、思わず、彼の腕に寄りかかった。彼の体温が、私の肌に伝わってくる。

「…私、もっと、知りたいんです。色々なことを」

私の言葉に、拓也は何も言わず、ただ、私の手を握りしめた。その手は、温かく、力強かった。

「…どこか、静かな場所、ありませんか？」

私の問いに、拓也は少し間を置いてから、ゆっくりと首を振った。

「…僕の部屋が、一番静かで、落ち着けますよ」

彼の言葉に、私は、心臓を鷲掴みにされたような衝撃を受けた。そして、同時に、抑えきれない熱が、全身を駆け巡るのを感じた。

帰り道、拓也の部屋へと向かう車の中で、私は窓の外を眺めていた。夏の夕暮れ時、茜色に染まる空。それは、私の心の中にも、同じように広がっていく熱の色のように見えた。

拓也の部屋は、シンプルで、落ち着いた雰囲気だった。しかし、そこには、私を待っていた、ある種の「興奮」が、静かに、しかし確かな存在感を持って漂っていた。

「あの…」

何を言えばいいのだろう。私の心臓は、まるで暴れ馬のように、激しく鼓動を打っていた。拓也は、何も言わずに、ただ、私の顔を見つめている。その視線に、私は、自分の体の奥底に眠っていた、ある「欲求」が、静かに、しかし確実に、顔を出すのを感じた。

「…私、なんだか、ドキドキしています」

私の言葉に、拓也は、ゆっくりと、私の手に指を絡ませてきた。その指先から伝わる熱が、私の体を駆け巡る。

「…僕も、ドキドキしていますよ、ハルカさん」

彼の声は、静かで、しかし、その奥には、抑えきれない熱が満ちていた。私は、彼の顔を見上げる。彼の瞳は、もう、私を誘うように、揺らめいていた。

「…私、どうしたらいいか、わからないんです」

私の言葉に、拓也は、優しく微笑んだ。そして、彼の指先が、私の指先を、ゆっくりと、なぞる。その感触に、私の体は、まるで意思を持っているかのように、熱を帯びていく。

「大丈夫ですよ。僕が、いますから」

彼の言葉は、私を包み込むように、優しく、そして力強かった。私は、思わず、彼の腕に寄りかかった。彼の体温が、私の肌に伝わってくる。

「…私、もっと、知りたいんです。色々なことを」

私の言葉に、拓也は何も言わず、ただ、私の手を握りしめた。その手は、温かく、力強かった。

「…でも、私、そういうことを、あまり、知らないんです」

私の告白に、拓也は、かすかに瞳を細めた。そして、彼の指先が、私の顎に触れる。

「…僕が、教えてあげますよ」

その言葉に、私の心臓は、さらに激しく鼓動を打った。夏の砂塵のように、私の心は、熱く、そして、どうしようもなく、乱れていた。

拓也の指先が、私の頬を、ゆっくりと、なぞる。その触れ方に、私は、自分でも気づいていなかった、ある「欲求」が、静かに、しかし、確かに、芽生えてくるのを感じた。それは、まるで、長い間、砂漠に埋もれていた泉が、ゆっくりと湧き上がるような感覚だった。

「…私、なんだか、恥ずかしいです」

私の言葉に、拓也は、優しく微笑んだ。そして、彼の唇が、私の唇に触れる。それは、まるで、熱を帯びた砂漠の風のように、優しく、しかし、私を包み込むような、熱を帯びたキスだった。

そのキスは、私の中に、今まで知らなかった、熱い衝動を呼び覚ました。まるで、夏の太陽に焼かれた大地が、雨を求めて、熱を放つように。

「…もっと、ください」

私の言葉に、拓也は、さらに深く、私を求めてきた。彼の腕が、私を優しく、しかし、力強く抱きしめる。その温もりに、私は、自分の体が、まるで意思を持っているかのように、熱を帯びていくのを感じた。

「…私、なんだか、どうにかなりそうです」

私の囁きに、拓也は、私の髪を優しく撫でながら、耳元で囁いた。

「…僕も、だよ、ハルカさん」

彼の言葉に、私は、さらに、彼の胸に顔を埋めた。彼の鼓動が、私の鼓動と重なり合う。それは、まるで、夏の夜に響く、虫の声のように、熱く、そして、激しく、私たちの周りを包み込んでいた。

その夜、私は、拓也に、今まで知らなかった、多くのことを教えてもらった。それは、まるで、渇いた大地に、恵みの雨が降り注ぐような、鮮烈な体験だった。体の奥底から、熱い衝動が湧き上がり、それを抑えきれず、私は、自分でも驚くほど、大胆になっていった。

「…もっと、欲しい…」

私の言葉は、まるで、止まることを知らない、夏の暑さのように、熱を帯びていた。拓也は、私の言葉に応えるように、さらに私を求めてきた。

そして、その夜、私は、自分の中に、こんなにも激しい、そして、止まることを知らない「欲求」が眠っていたのかと、初めて知った。それは、まるで、夏の砂塵に溶け出した、私の、もう一人の自分だった。

翌朝、窓の外から差し込む朝日に、私はゆっくりと目を開けた。昨夜の熱が、まだ体に残っている。隣で眠る拓也の寝顔を見ながら、私は、自分の体の変化に、静かに、しかし、確かな喜びを感じていた。

ゴルフのレッスンで、私は、飛距離が伸びた、と言われた。それは、ただのゴルフの技術向上だけではなかったのかもしれない。私の体は、あの夜の熱によって、さらに、解き放たれたのだ。

「おしゃぶり妻」

健一が、もう一度、私をそう呼ぶことがあるだろうか。もし、呼ぶとしたら、その時、私の心は、どんな感情を抱くだろう。

夏は、まだ始まったばかりだ。そして、私の、この、止まることを知らない鼓動も、まだ、止まることはないのだろう。