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## 砂漠のオアシス

「ふぅ、今日も一日お疲れ様でした」

山田花子、26歳。福祉職。身長158cm、足のサイズは24cm。彼女は今日も、重い身体に鞭打って、利用者たちのために奔走した。窓の外は、燃えるような夕焼け。都会の喧騒も、この時間になると少しだけ静けさを取り戻す。

花子の職場は、高齢者福祉施設。毎日のように、笑顔、涙、そして温かい手で触れられる。彼女は、そんな人々に囲まれて、充実した日々を送っていた。しかし、彼女には一つ、人には言えない秘密があった。それは、彼女が「大和撫子」でありながら、その見かけとは裏腹に、異様に毛深いということだった。

「あー、また腕毛が伸びてる…」

帰宅後、バスルームで鏡を見た花子は、ため息をついた。外国人とのハーフである彼女は、日本人には珍しい、濃い毛深さを持っていた。腕、脚、そして背中…。どこもかしこも、まるで獣のように毛が生えている。

「でも、これも私なんだよね」

そう自分に言い聞かせながら、花子はカミソリを手に取った。肌を傷つけないよう、慎重に、丁寧に。長年続けてきた作業は、もはや儀式のようなものだった。

「まったく、この体質さえなければ、もっと楽なのに…」

そんなことを思いながら、彼女は浴室を出た。リビングのソファに腰を下ろし、温かいハーブティーを一口飲む。ふと、テレビをつけると、有名女優がキャンペーンガールを務める下着のCMが流れていた。すらりとした脚、透き通るような肌。それを見て、花子はまたため息をついた。

「私には、あんな風になれないんだろうな…」

彼女の足は、異様に肉厚で、甲も高い。両手でようやく一周できるほどの幅があり、その姿は、まるで太い柱のようだった。それに加えて、彼女の体質からくる体臭の強さ。自分でも気づいているのに、どうしても改善できない。

「でも、仕事で利用者さんたちを支えることはできる。それでいいんだ」

そう自分に言い聞かせても、心の奥底で、寂しさや虚しさが募るのを感じる。恋愛にだって、諦めかけていた。こんな自分を、誰かが愛してくれるのだろうか。

ある日、花子は、施設で新しく担当することになった利用者、田中さん（80代、男性）と出会った。田中さんは、かつては有名な画家だったが、病気で筆を握れなくなっていた。しかし、彼の瞳は、かつての情熱を失っていなかった。

「先生、今日はどんなお話をしましょうか？」

花子は、田中さんの部屋を訪ねた。田中さんは、ベッドに横たわりながら、窓の外を眺めていた。

「花子さん、君はいつも笑顔で、元気いっぱいだな」

田中さんは、花子の顔を見て微笑んだ。

「ありがとうございます。先生も、今日は調子が良いようですね」

花子は、田中さんの手を取り、優しく握った。その手は、かつて絵筆を握っていた頃の力強さを失い、細く、弱々しくなっていた。

「昔は、この手で、どんな絵でも描けたんだがな…」

田中さんは、遠い目をして呟いた。

「先生の絵、大好きです。いつか、また描けるようになると信じています」

花子は、田中さんの言葉に、心からそう思った。

数週間後、田中さんの容態が急変した。花子は、夜遅くまで、田中さんのそばに付き添った。田中さんは、意識が朦朧とする中で、花子に語りかけた。

「花子さん…君は、私の砂漠に現れたオアシスだ…」

その言葉を最後に、田中さんは静かに息を引き取った。

田中さんの死は、花子にとって大きな悲しみだった。しかし、彼女の心には、田中さんの言葉が深く刻み込まれていた。

「砂漠に現れたオアシス…」

花子は、自分の体毛や体臭が、田中さんにとって、そうであったのかと思った。もしかしたら、彼女の「異様さ」こそが、誰かの心を癒し、支える力になるのかもしれない。

その日から、花子は、自分自身を、以前よりもっと愛せるようになった。毛深いことも、肉厚な足も、体臭も、すべてが自分の一部なのだと。

ある週末、花子は、友人の誘いで、合コンに参加することになった。少し緊張しながら、会場に向かう。そこで出会った男性は、花子の「異様さ」に、少し戸惑っているようだった。

「あの、足、大きいですね」

男性は、花子の24cmの足を見て、そう言った。

「ええ、大きいんです。でも、しっかり大地を踏みしめることができますから」

花子は、笑顔で答えた。その言葉に、男性は少し驚いた顔をしたが、すぐに笑顔になった。

「なるほど。しっかりしてるんですね」

その夜、花子は、数人の男性と話をした。皆、花子の「異様さ」に、最初は驚いていたが、花子の明るさや、優しさ、そして芯の強さに惹かれていった。

「山田さん、あなたのそういうところ、素敵だと思います」

一人の男性が、花子の腕の毛に気づきながら、そう言った。

「えっ…」

花子は、驚いて、自分の腕を見た。

「普通じゃないかもしれないけど、それがあなたの個性なんだと思います。それに、なんか…温かそうで、いいなって」

男性の言葉に、花子の目から、涙が溢れそうになった。

「ありがとうございます…」

その夜、花子は、初めて、自分自身を、そのまま受け入れてくれる人と出会えた気がした。

帰宅後、花子は、鏡の前で、自分の腕を見た。以前は、嫌悪感しか抱けなかった毛深い腕が、今は、なんだか愛おしく見えた。

「私、砂漠のオアシスになれるかもしれない…」

そう呟きながら、花子は、窓の外に広がる夜空を見上げた。星が、きらきらと輝いていた。その輝きは、まるで、花子自身の輝きのように見えた。

彼女の人生は、まだ始まったばかりだ。これからも、たくさんの困難にぶつかるだろう。しかし、花子は、もう一人で悩むことはない。彼女は、自分自身を愛し、そして、彼女を愛してくれる人たちと共に、強く、美しく生きていく。砂漠のオアシスのように、誰かの心を温かく照らしながら。