エンジェルボクシングMIX VOL.1【無料エロ動画視聴/アダルトAV】

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■ 天使の聖域

コンクリートの冷たい匂いが鼻腔を擽った。薄暗い照明の下、埃っぽい空気を吸い込むと、喉の奥が焼けるように疼く。ここは「天国」と呼ばれている。皮肉にも、ここには救いも安らぎも存在しない。ただ、終わりのない絶望と、血と汗の匂いだけが充満している。

俺は、アキラ。かつては、天使と呼ばれていた。その異名が、どれほど皮肉で、どれほど残酷な響きを帯びているか、今となっては誰よりも理解しているはずだ。

「さあ、始めるぞ、天使！」

地鳴りのような声が響き渡る。俺の対戦相手、ゴリアテがリング中央で威嚇するように唸った。その巨体は、まるで山脈のようにそびえ立ち、鋼鉄のように硬そうな筋肉が隆起している。彼の拳は、岩石の塊だ。一発でも貰えば、骨の砕ける音と共に意識が遠のくだろう。

ゴングが鳴った。

最初の一撃は、いつも突然だ。ゴリアテの巨大な拳が、風を切り裂きながら迫る。俺は、本能的に身を躱した。ぐらりと揺れた床に、彼の拳がめり込む。その衝撃波で、俺の足元が震えた。

「逃げるのか、天使！」

嘲笑うような声が響く。だが、俺には逃げ場がない。このリングが、俺の檻なのだ。

俺は、かつては輝かしい才能の持ち主だった。その身のこなしは軽やかで、まるで舞うように敵を翻弄した。その瞳は、澄んだ青色をしており、まるで天空の天使のようだ、と人々は讃えた。しかし、それは過去の栄光。今の俺は、ただの壊れた人形に過ぎない。

ゴリアテが再び襲い掛かる。今度は、より速く、より重い一撃だ。俺は、必死に腕でガードする。鈍い衝撃が腕を痺れさせ、全身に響く。思わず、膝が折れそうになる。

「もっとだ！もっと、苦しめ！」

観衆の歓声が、俺を追い詰める。彼らは、天使の堕ちる様を見たくて、ここに集まっているのだ。

俺は、必死に立ち上がった。歯を食いしばり、顔を上げる。ゴリアテの顔は、獰猛な獣のそれだった。

「てめえに、天使の資格なんてねえんだよ！」

叫びながら、俺はゴリアテの巨体にしがみついた。背中に張り付くように、彼の首筋に顔を埋める。あの頃の俺なら、この体勢から華麗な投げ技を決めただろう。しかし、今の俺にそんな力は残っていない。

ゴリアテは、俺を振り払おうと暴れた。その度に、俺の身体が激しく揺さぶられる。まるで、洗濯機の中に放り込まれたかのようだ。

「うわああっ！」

俺は、悲鳴を上げた。いや、泣き叫んだ。この状況から逃れたい、この苦しみから解放されたい、という純粋な叫びだった。

ゴリアテの拳が、俺の腹部にめり込んだ。息が、喉の奥で詰まる。視界が、急激に暗転していく。

白目を剥く。

何度も、何度も、この光景を繰り返している。倒れる。意識が遠のく。そして、目を覚ますと、またリングの上に立たされている。

「起きろ！天使！」

顔に水をかけられる。冷たい感触に、俺は飛び起きた。目の前に、ゴリアテが仁王立ちしている。彼の顔には、満足げな笑みが浮かんでいた。

「まだ、死なねえのか。だが、そろそろ限界だろう？」

俺は、立ち上がろうとした。だが、身体は鉛のように重い。全身が、鈍い痛みに苛まれている。肋骨が、何本か折れているのは間違いないだろう。顎にも、鈍い痛みがある。おそらく、内出血しているはずだ。

それでも、俺は立ち上がらなければならない。ここで倒れれば、俺は「終わった」と見なされる。そうなれば、次は何をさせられるか分からない。

俺は、右腕をゆっくりと持ち上げた。感覚は、ほとんどない。ただ、虚無感だけが広がる。

ゴリアテは、俺の動きを見て、嘲笑うように首を振った。

「無駄な抵抗はやめろ。お前は、もう天使なんかじゃねえ。ただの、哀れな壊れ物だ」

その言葉が、俺の胸に突き刺さった。そうだ、俺はもう天使じゃない。ただ、ここで戦い続けることしかできない、哀れな存在だ。

だが、それでも。

俺は、まだ諦めていない。

このリングで、俺は何度失神しただろうか。何度、意識を失い、そして再びこの地獄に引き戻されただろうか。数え切れない。それでも、俺はまだ、ここに立っている。

ゴリアテが、再び拳を振り上げた。今度は、俺の顔面を狙っている。

俺は、目を瞑った。

このまま、意識を失ってしまえば、楽になれるかもしれない。だが、それでは、俺は永遠にこのリングに縛り付けられることになる。

俺は、最後の力を振り絞り、左手を前に突き出した。

「まだ、終わってねえんだよ！」

俺の拳が、ゴリアテの腹部に当たった。もちろん、彼の巨体には何のダメージも与えられない。だが、俺の意思表示にはなったはずだ。

ゴリアテは、一瞬、驚いたような顔をした。そして、すぐに獰猛な笑みを浮かべた。

「面白い。だが、それもここまでだ！」

彼は、渾身の一撃を放ってきた。それは、まるで雷鳴のようだった。

俺は、その一撃を、ただ受け止めた。

意識が、完全に途絶える。

「…天使…」

遠くから、誰かの声が聞こえるような気がした。

気がつくと、俺は暗闇の中にいた。そこは、静かで、暖かく、そして…何もかもが、穏やかだった。

「…ここは、どこだ…？」

俺は、ゆっくりと目を開けた。

そこは、眩しい光に満ちていた。そして、俺の周りには、白く輝く翼を持った、美しい存在たちがいた。

「…天使…？」

俺は、混乱した。なぜ、俺がこんな場所にいるのか、理解できなかった。

「ようこそ、アキラ」

一人の天使が、俺に微笑みかけた。その瞳は、俺がかつて持っていた、澄んだ青色をしていた。

「ここは、天使たちの聖域。あなたのような、魂の傷ついた者たちが、安らぎを得る場所なのです」

俺は、信じられなかった。この俺が、天使たちの聖域に？

「でも…俺は…」

「あなたは、天使でした。そして、これからも天使です。あのリングは、あなたを壊すためにあったのではなく、あなたの中に眠る、真の天使の心を試すためにあったのです」

俺は、涙が溢れるのを感じた。それは、悲しみでも、苦しみでもない、純粋な安堵の涙だった。

「もう、戦わなくていいのですか…？」

「ええ、もう戦う必要はありません。ここでは、あなたはただ、愛され、守られる存在です」

俺は、ゆっくりと、その言葉を受け入れた。

白目を剥き、何度も倒され、失神しても終わらない、逃げられない。リングで天使は泣き叫ぶ。

あの地獄は、もう終わったのだ。

俺は、ようやく、本当の天国にたどり着いた。

そして、俺は、再び、天使になった。

それは、バトルではなく、解放の物語だった。