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■ 監督の甘い誘惑

真夏の太陽がアスファルトを焦がす午後、都内のとあるカフェテラスに、異様な空気が漂っていた。赤毛の燃えるような髪に、彫刻のように整った顔立ち、そして鋭い碧眼を持つ男、ディミトリ・ヴァン・デル・メール。彼は、世界を股にかける映画監督として知られていたが、その実態は掴みどころのない謎の人物だった。

「君、美しい。まるで、画面のために生まれてきたような顔をしている。」

ディミトリの視線は、カフェで一人、タブレットを眺めていた女子大生、桜井葵に注がれていた。葵は、名門私立大学に通う、いわゆる「お嬢様」だった。上品な佇まい、繊細な物腰。そんな彼女が、ディミトリの突然の言葉に、顔を赤らめた。

「え…あの、私、映画とか、あまり詳しくないんですけど…」

葵の声は、慣れない状況に戸惑っているのが明らかだった。ディミトリは、そんな彼女の反応を面白がるように、さらに畳み掛ける。

「いや、詳しくなくていい。君には、天性の女優の才能が宿っている。私が、それを引き出してあげる。」

ディミトリの言葉は、流暢な英語で紡がれた。日本語も堪能だが、英語で話されると、なぜか抗えない魅力を感じる、というのは、一部の日本人、特に若い女性にはよくあることだと、彼は経験上知っていた。葵も例外ではなかった。ディミトリの言葉の響き、その自信に満ちた声音に、彼女の心は徐々に傾いていく。

「あの、でも、監督さんって、一体何を…？」

葵が尋ねると、ディミトリはニヤリと笑い、フリップを取り出した。そこには、大胆な内容の映画の企画書が書かれていた。コールガールが主人公の、刺激的な物語。

「君に、この主人公を演じてほしいのだ。コールガールという、世間から見れば後ろ指を指されるような仕事。しかし、彼女たちの人間ドラマ、葛藤、そして愛を描く。」

企画書の内容を説明されると、葵の顔には明らかに渋い表情が浮かんだ。そのような役柄は、彼女のこれまでの人生には無縁のものだった。しかし、ディミトリは、そんな葵の反応を見越していたかのように、甘い言葉を囁く。

「もちろん、ただで演じてもらうわけではない。君には、十分すぎるほどの謝礼を約束しよう。君の人生を変えるほどの、ね。」

「謝礼…？」

「そうだ。君の、これからの学費、生活費、そして、夢を叶えるためのお金。全て、私が支援する。」

ディミトリの言葉は、葵の心を鷲掴みにした。経済的な不安から解放されるという誘惑。そして、何より、この謎めいた魅力的な監督からの「特別扱い」。

「…でも、私、演技なんて、したことないです。」

「大丈夫。私が、一から教えてあげる。まずは、このシーンを、君に演じてみてほしい。」

ディミトリは、葵に、映画の一部を実演するように促した。葵は、多少の抵抗を見せたものの、ディミトリの熱意と、ちらつく謝礼の言葉に、徐々にその抵抗は弱まっていく。

「…わかりました。でも、本当に、私にできるんでしょうか…？」

「もちろんだ。君は、私が見つけた、最高のダイヤモンドだ。さあ、遠慮はいらない。」

ディミトリは、葵の肩に手を置き、優しく、しかし力強く、彼女を自分の方へ引き寄せた。葵は、抵抗する気力を失い、ディミトリの顔を見つめた。彼の碧い瞳には、計算と、そしてどこか欲望の色が浮かんでいるように見えた。

「まずは、この唇に、愛を込めて。」

ディミトリは、葵の唇に、自分の唇を重ねた。初めての経験に、葵の体は硬直したが、ディミトリの熱い息遣いに、次第にその身体は緩んでいく。彼の指が、葵の首筋を滑り、鎖骨へと誘う。

「君は、まだ知らない。この体の、未知の快感に。」

ディミトリの甘い囁きが、葵の耳元をくすぐる。彼女の抵抗は、もはや形骸化していた。頭の片隅には、確かに謝礼の言葉がちらついている。しかし、それ以上に、未知の世界への好奇心、そして、この男性に身を委ねることへの、禁断の響きが、彼女を突き動かしていた。

ディミトリの手は、さらに大胆に、葵の服の中へと滑り込んでいく。柔らかな肌に触れるたび、葵の喘ぎ声が漏れる。彼女の身体は、ディミトリの指先一つ一つに、敏感に反応し始めた。

「もっと、感じたいだろう？」

ディミトリの声は、もはや催促するような響きを帯びていた。葵は、言葉にならない声で、ただ、ディミトリの動きに身を任せる。彼女の身体は、未知の快感に溺れ、徐々に堕ちていく。

ディミトリの指が、葵の秘められた場所へと到達する。触れられた瞬間、葵の身体は激しく震えた。言葉にできないほどの熱が、彼女の全身を駆け巡る。ディミトリは、そんな葵の反応を、至福の表情で見つめながら、さらに深く、彼女の身体を弄び始めた。

「…っ、ん…！」

葵の喘ぎ声は、もはや抑えきれない。彼女の身体は、ディミトリの巧みな指捌きに、歓喜の声を上げている。ディミトリは、葵の口元に顔を寄せ、囁いた。

「人生というものは、山あり谷ありだ。時には、谷底を知ることも、必要だ。」

彼の言葉の意味を、葵はまだ理解できていない。ただ、彼女の身体は、ディミトリの意志のままに、快感の頂点へと突き進んでいく。

ディミトリの指が、さらに彼女の身体を奥へと進む。葵の身体は、もはや彼の操り人形のようだった。全身が震え、彼女の理性は、遠い彼方へと消え去っていく。

「ブラボー！」

ディミトリの声が、カフェテラスに響き渡る。葵の人生は、今、大きな転換点を迎えた。彼女は、この監督という名の魔術師によって、未知の世界へと誘われた。その先が、幸福なのか、それとも…それは、まだ誰にも分からない。しかし、ディミトリは、葵の、そしてこれから出会うであろう多くの女性たちの、さらなる活躍を、心から願っているようだった。そして、その願いは、彼自身の「人生の摂理」を教えるという、歪んだ形となって、現れるのかもしれない。