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■ 禁断の果実

ゆうな、30歳。独身時代は「清純派」を自負していた。それは、彼女自身がそう信じていたからだ。しかし、結婚という安定を手に入れた途端、内なる抑圧された欲望が、静かに、しかし確実に、その牙を研ぎ澄まし始めていた。夫の健一は、優しく、穏やかな人物だった。仕事熱心で、家族を愛しているのは間違いない。だが、ゆうなにとって、それはまるで、退屈な日々のための、美しく彩られた鳥籠だった。

初めての「不貞」への誘いは、思わぬ形で訪れた。近所のカフェで偶然出会った、一回り年上の男性、拓海。彼は、ゆうなとは全く違う種類の人間だった。野性的な魅力、自信に満ちた瞳、そして何よりも、彼女の内に秘められた「何か」を見透かすような、鋭い眼差し。初めて会ったはずなのに、ゆうなは彼に強く惹かれた。それは、健一には決してない、危険な香りのする魅力だった。

最初は、ただの会話だった。カフェでの偶然の再会。仕事の話、趣味の話。しかし、会話は徐々に、より親密な領域へと drift していった。拓海は、ゆうなの結婚生活について、遠回しに尋ねた。「奥さん、幸せですか？」という問いに、ゆうなは言葉に詰まった。幸せ、ではあった。だが、それは「満たされている」というのとは、少し違っていた。

その夜、ゆうなは眠れなかった。拓海の言葉が、頭の中で反芻していた。「もっと、人生を楽しんでいいんだよ。」その言葉に、抑えきれない衝動が湧き上がった。健一の寝息を聞きながら、ゆうなはスマートフォンを手に取った。拓海の連絡先は、いつの間にか彼女の手に収まっていた。震える指で、「今、お時間ありますか？」とメッセージを送った。

数分後、返信が来た。「君の部屋の前にいる。」

心臓が早鐘を打った。背徳感と、それ以上に強い、抑えきれない興奮。ゆうなは、そっとベッドから抜け出した。薄暗い廊下を歩き、玄関のドアを開ける。そこには、暗闇に浮かび上がる拓海の姿があった。彼の顔には、いつもの余裕と、そして、ゆうなだけに見せる、熱い視線があった。

「ゆうな…」

彼の声は、低く、甘く響いた。ゆうなは、まるで操り人形のように、彼の腕の中に吸い寄せられた。初めての「他人棒」だった。健一とは全く違う、力強く、そしてどこか荒々しい感触。ゆうなは、その全てを受け入れた。

その夜、ゆうなは、これまでに経験したことのない多幸感に包まれた。罪悪感は、微かにあった。しかし、それ以上に、全身を駆け巡る快感と、背徳感からくるスリルが、彼女を支配していた。拓海の腕の中で、ゆうなは、まるで別の人間になったかのような感覚に陥った。それは、解放だった。

その瞬間から、ゆうなの「不貞の旅路」は始まった。拓海との関係は、日を追うごとに深まっていった。カフェでの密会、ホテルの部屋での情熱的な逢瀬。ゆうなは、二重生活を送るようになった。昼間は、良き妻、良き母親として。夜は、欲望に忠実な、大胆な女性として。

彼女は、健一に嘘をつくことに、最初は罪悪感を感じていた。しかし、拓海との時間が増えるにつれ、その罪悪感は希薄になっていった。むしろ、健一への嘘が、彼女の背徳感をさらに煽り、快感を増幅させる要因となっていた。

「健一には、バレないようにしなくちゃ…」

そんな理性的な声も、彼女の耳には届かなくなっていた。彼女の心と体は、完全に拓海に支配されていた。拓海もまた、ゆうなの奔放さに魅了されていた。普段はクールな彼も、ゆうなといる時は、まるで少年のような無邪気さを見せた。

しかし、そんな蜜月の日々にも、終わりは近づいていた。ある日、ゆうなは、拓海との関係に、ふとした虚しさを感じ始めた。いくら快楽に溺れても、それは刹那的なもの。健一との、穏やかで、でも確かな愛情とは、やはり違う。

「私、どうしたいんだろう…」

そんな葛藤が、ゆうなの胸を締め付けた。彼女は、拓海という「禁断の果実」に、身も心も捧げようとしていた。しかし、その果実を噛みしめるたびに、彼女の心は、より深く、暗い迷宮へと迷い込んでいくようだった。

ある週末、健一が急な出張で家を空けることになった。その夜、ゆうなは、拓海を家に招いた。普段なら、絶対にありえないことだった。しかし、その日は、健一への罪悪感すら、彼女の背中を押していた。

拓海は、ゆうなの家を、まるで自分のものであるかのように闊歩していた。ゆうなは、そんな彼の姿に、興奮と、そして、かすかな不安を感じていた。

「ゆうな、君は本当に綺麗だ…」

拓海は、そう言いながら、ゆうなの肩に手を回した。その瞬間、玄関のドアが開く音がした。

「ただいま。急に仕事が終わったんだ。」

それは、健一の声だった。

ゆうなは、凍り付いた。拓海も、驚いた顔で、ゆうなを見つめた。

この後、ゆうなの「不貞の旅路」に、どのような結末が待っているのか。それは、彼女自身の選択に委ねられている。罪悪感と背徳感、そして刹那の快感。その全てを凌駕する「SEXへの多幸感」に支配された彼女は、一体、どこへ向かうのだろうか。禁断の果実を噛みしめ続けた先に、待っているのは、さらなる快楽か、それとも、破滅か。ゆうなの物語は、まだ、終わらない。