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## 揺らぎの響き

20代前半、ゆいかは都内の総合病院の受付で働いていた。夏真っ盛り、冷房の効いた受付ロビーは都会の喧騒を一時的に忘れさせてくれるオアシスだった。しかし、その日、彼女の日常は予想外の波乱に巻き込まれることになる。

「すみません、予約の確認をお願いします。」

いつものように、丁寧な言葉遣いで患者さんの対応をしていたゆいかに、異変が起きたのは昼休みを過ぎた頃だった。急に、腹部の奥から鈍い痛みが這い上がってきた。最初は少し食べ過ぎたかな、程度に思っていたが、次第に痛みの強さが増し、冷や汗が滲み始めた。

「大丈夫ですか？」

隣の席の同僚が心配そうに声をかけてくる。ゆいかは無理に笑顔を作り、「大丈夫です、ちょっとお腹が痛いだけなんで。」と答えたが、その声は掠れていた。腹痛は間断なく襲いかかり、さらに熱っぽい倦怠感も全身を包み込んでいく。

「…もう、無理かも。」

そう呟くと、ゆいかはデスクに突っ伏した。意識が朦朧とする中、遠くでサイレンの音が聞こえたような気がした。

次に目を覚ました時、ゆいかは見慣れない天井を見上げていた。身体はまだ重く、腹痛も熱も残っている。しかし、先ほどとは違う、ひんやりとした空気が漂っていた。

「…ここは？」

ぼんやりとした頭で周りを見渡すと、そこは病室のようだった。ベッドの傍らには、医療器具らしきものが並べられている。

「目が覚めましたか？」

声がした方を見ると、白衣を着た男性が立っていた。医師だろうか。その顔には、どこか疲労の色が濃く浮かんでいた。

「はい…。」

ゆいかはかすかに答えた。

「残念ながら、あなたのクリニックは冷房が故障してしまって、今は休診になっています。それで、こちらの分院で診察させてもらうことになりました。」

医師はそう説明しながら、カルテらしきものに何かを書き込んでいる。ゆいかは、自分が病気で弱っている患者だということを改めて認識した。

「それで、症状を詳しく聞かせてもらえますか？腹痛と発熱ですね。」

医師は、ゆいかの顔をじっと見つめながら尋ねた。ゆいかは、自分の症状をできる限り正確に伝えようとした。

「はい、朝からお腹が痛くて、熱もあります。あと、なんだか身体がだるくて…。」

医師は、ゆいかの言葉を丁寧に聞きながら、聴診器を当て、腹部を触診した。その手つきは慎重だったが、ゆいかの身体のラインに触れるたびに、医師の息遣いが少しだけ速くなるのを、ゆいかは敏感に感じ取っていた。

「うーん、確かに腹痛は強そうです。熱も少しありますね。」

医師は、ゆいかの胸元に手を伸ばした。ブラジャーの上から、豊満な胸をゆっくりと撫でる。ゆいかの身体は、医師の熱に呼応するように、微かに震えた。

「お腹の調子はどうですか？吐き気や下痢は？」

医師は、ゆいかの腰に手をかけ、パンツを少しずらした。直接、肌に触れる感触に、ゆいかは息を呑む。

「…吐き気は、少し…。」

医師は、ゆいかの股間に指を入れ、ゆっくりと奥へと挿入した。その行為は、医療行為として行われているのだろうか。それとも…。ゆいかは、自分の身体が医師の意のままに操られているような感覚に、戸惑いを覚えていた。

「随分と分泌液が多いですね。感染症の可能性もありますから、検査のために採取させてもらいます。」

医師は、綿棒を膣に挿入し、分泌液を採取した。その間も、ゆいかの身体からは、微かな呻き声が漏れ出る。

「残念ながら、検査結果は陰性でした。ただ、身体の調子が悪いのは確かですから、しばらくは入院して様子を見ましょう。」

医師は、ゆいかの頭を優しく撫でた。その瞳には、純粋な医療への情熱と、それとは別の、歪んだ欲望が混じり合っているように見えた。

夜、病室に静寂が訪れた。ゆいかは、身体の怠さと、医師の視線への戸惑いから、なかなか眠りにつけなかった。

ふと、ドアが開く音がした。見ると、先ほどの医師が、再び病室に入ってきた。手には、医療器具らしきものが握られている。

「どうしました？眠れませんか？」

医師は、ゆいかのベッドの傍らに座り込んだ。その顔には、昼間とは違う、妖しい光が宿っていた。

「…先生、私、大丈夫でしょうか？」

ゆいかの声は、震えていた。

「大丈夫ですよ。私がしっかり診てあげますから。」

医師は、ゆいかの頬に手を伸ばし、優しく撫でた。その指先から伝わる熱に、ゆいかの身体は、抗うことのできない衝動に駆られていく。

「先生…。」

ゆいかの声は、次第に熱を帯びていった。病室には、二人の吐息だけが響き渡っていた。

翌朝、ゆいかは、自分が体験したことの全てが、現実だったのか、それとも悪夢だったのか、確信が持てずにいた。身体はまだ怠いが、腹痛も熱も、嘘のように消えていた。

「不思議ですね。昨日の症状が、嘘みたいに…。」

ゆいかは、医師にそう告げた。医師は、かすかに微笑むだけだった。

「それは良かった。あなたのような健康的な体の方には、病気は似合いませんから。」

医師の言葉は、ゆいかの心に、微かな不安を残した。

その後、ゆいかは退院し、再び受付の仕事に戻った。しかし、あの夜の出来事は、彼女の心に、消えることのない傷跡を残していた。

病院の受付に座るゆいかの姿は、以前と変わらないように見えた。しかし、彼女の胸の内には、あの夜、医師に触れられた肌の感触と、歪んだ欲望の残像が、今もなお、彼女を苦しめていた。

それは、医療という聖域に潜む、人間の暗部が生み出した、静かで、しかし、抗いようのない、揺らぎの響きだった。