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■ 禁断の扉

真夏の夜、熱帯夜の湿った空気が肌にまとわりつく。バーの片隅で、男はグラスを傾けていた。名前は健一、30歳。都内のIT企業に勤める、どこにでもいるサラリーマンだ。しかし、彼の心は退屈という名の泥沼に沈んでいた。仕事もプライベートも、刺激というものがすっかり消え失せていたのだ。

「こんな夜は、何か面白いことが起きてもおかしくないだろう？」

独りごちた健一の視線が、ふと、カウンターの端に座る女性に吸い寄せられた。細身のワンピースは、彼女のしなやかな曲線を描き出している。艶やかな黒髪は、肩のあたりでゆるやかにカールしていた。優しげな瞳は、しかし、どこか憂いを帯びているように見えた。

「きれいな人だ…」

健一は、思わず息を呑んだ。思わず、というには、あまりにも強く惹きつけられたのだ。彼女の纏う空気に、危険な甘い香りが混じっているように感じた。

意を決し、健一は彼女の隣にそっと腰を下ろした。

「こんばんは」

優しく声をかけると、彼女はゆっくりと顔を上げた。その瞬間、健一は、彼女の顔がただきれいなだけではないことを悟った。造り物の美しさではない、内側から滲み出るような、成熟した女性の艶やかさ。そして、その瞳の奥に宿る、複雑な感情の揺らぎ。

「こんばんは」

彼女の声は、夜の静寂に溶け込むような、低く落ち着いた響きを持っていた。

「あの…もしよろしければ、一杯ご一緒しませんか？」

健一は、少しどもりながらも、言葉を続けた。緊張で、額にじわりと汗が滲む。

彼女は、ほんの少しの間、健一の顔を見つめた。その視線に、値踏みするような、あるいは、何かを探るような色合いがあった。そして、ゆっくりと微笑んだ。

「ええ、いいですよ」

その微笑みに、健一の胸は高鳴った。まるで、禁断の扉に手をかけたような、甘く危険な予感がした。

二人は言葉を交わしながら、お互いのことを少しずつ知っていった。彼女の名前は沙織、35歳。結婚して7年になるという。口元からは、時折、幸福な妻の顔とはかけ離れた、どこか寂しげな響きが漏れた。健一は、沙織の言葉の端々に、満たされない何かを感じ取った。そして、彼女の口元からこぼれる、男性的な褒め言葉への、微かな、しかし確かな反応。

「旦那様、お仕事でお忙しいんですか？」

健一は、核心に触れるような質問を投げかけた。沙織の瞳が一瞬、揺れた。

「ええ、ええ、そうですわ。いつも、帰りが遅くて…」

その言葉の裏に隠された、孤独と、そして、それを埋め合わせたいという渇望。健一は、それを敏感に感じ取っていた。

「…寂しいでしょう？」

健一は、低く囁いた。沙織は、顔を伏せ、何も言わなかった。しかし、その肩が、微かに震えているように見えた。

その夜、二人はホテルへと向かった。タクシーの中、沙織は、窓の外の景色をぼんやりと眺めていた。その横顔は、どこか遠い世界にいるかのようだった。

部屋に入ると、沙織は、まるで迷子になった子供のように、部屋の中をきょろきょろと見回した。そして、健一の顔を見て、ふっと、少女のような笑顔を見せた。

「なんだか、ドキドキしますね」

その言葉に、健一は、自分も同じ気持ちであることを悟った。しかし、それは、初めての相手に対する、純粋なときめきとは、少し違う感情だった。それは、許されないことだと知りながら、それでも抗いがたい魅力に突き動かされるような、禁断の、しかし、抗いがたい興奮だった。

健一は、沙織の顔を優しく覗き込んだ。沙織の瞳は、期待と不安、そして、微かな官能に揺れていた。

「大丈夫だよ」

健一は、沙織の手をそっと握った。その手は、驚くほど熱かった。

やがて、沙織のワンピースが、床に滑り落ちた。露わになった彼女の身体は、予想以上に官能的だった。滑らかな肌、豊かに張った胸、そして、そのくびれた腰。健一は、思わず息を呑んだ。

「…恥ずかしいです」

沙織は、赤面しながら、そう言った。しかし、その瞳には、恥じらいだけではない、強い欲望の光が宿っていた。

健一は、沙織の唇に、ゆっくりと、しかし確かなキスを落とした。沙織は、最初は戸惑っていたようだったが、やがて、健一のキスに、熱く応えた。その唇は、まるで長年渇いていた大地が、恵みの雨に潤うかのように、健一のキスを貪った。

二人の身体は、次第に熱を帯びていく。沙織の喘ぎ声は、部屋の空気を震わせ、健一の理性を麻痺させていった。彼女の身体は、驚くほど敏感で、健一の指先が触れるたびに、熱く反応した。

「…っ、もっと…」

沙織の声は、甘く、そして、切実に健一に求めた。その言葉に、健一の身体は、まるで意思を持ったかのように、沙織の身体に絡みついていった。

彼女のイキっぷりは、想像を絶するものだった。まるで、長年抑えつけられていた情熱が、堰を切ったように溢れ出したかのようだった。その声は、部屋中に響き渡り、健一を、さらに深い陶酔へと誘い込んだ。

「…あなた、すごいわ…」

沙織は、喘ぎながら、そう呟いた。その瞳は、恍惚とした光を宿していた。

「あなたこそ、すごい…」

健一は、沙織の耳元で囁いた。彼女の身体は、まるで秘密の楽園のように、健一の心を掴んで離さなかった。

夜は更け、二人の愛は、禁断の果実を貪るかのように、激しさを増していった。沙織の身体は、健一の欲望を、余すところなく受け止めた。そして、彼女の放つ、芳醇な色香は、健一の理性を、さらに緩やかに、しかし確実に溶かしていった。

朝、目覚めた時、健一の隣には、穏やかな寝息を立てる沙織がいた。その顔は、昨夜の熱狂とは打って変わり、まるで天使のように無垢だった。

健一は、沙織の寝顔を、静かに見つめた。この一夜の出来事は、二人の人生に、どのような波紋を広げるのだろうか。

健一は、静かにベッドから抜け出した。そして、沙織の枕元に、そっと、自分の名刺を置いた。

「…また、会いたい」

心の中で、そう呟いた。

沙織が目覚めた時、彼女の心には、昨夜の興奮と、そして、微かな罪悪感が、入り混じっていた。しかし、それ以上に、彼女の心を満たしていたのは、久しく忘れていた、熱く、そして、刺激的な感情だった。

健一は、沙織との一夜を、決して忘れることはなかった。そして、沙織もまた、健一との出会いを、心の奥底に秘めた、秘密の宝物とした。

二人の関係は、その後も続いた。それは、決して世間には語られることのない、禁断の愛だった。しかし、その禁断の愛こそが、二人の退屈な日常に、燃え盛る炎のような、抗いがたい刺激を与え続けたのだった。

そして、健一は、沙織の、あの「嘘のような壮絶なイキっぷり」を、忘れられない記憶として、胸に刻みつけた。それは、彼が「エロイ人妻」を求める理由を、さらに強固なものにした。彼にとって、沙織は、まさに「不倫セックスの天才人妻」の、最高の見本だったのだ。