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## 鏡の中のアスリート

　アスリート、という言葉は、私にとって二つの意味を持っていた。一つは、鍛え抜かれた肉体と揺るぎない精神で頂点を目指す、あの眩しい存在。もう一つは、鏡の中に映る、私自身だった。

　私の名は、アスカ。競技ダンスの世界で、私は「アスリート」として生きてきた。しなやかな体、鋼のような筋力、そして何よりも、表現力を磨き上げたダンス。それらは、日々の過酷なトレーニングの賜物だった。

　「アスカ、今日のストレッチはさらに柔らかさが出ているわね！」

　コーチの声が響く。私は、常人では考えられない角度まで開脚し、その状態を維持したまま、さらに上半身を折り曲げていた。まるで、体がゴムでできているかのように。この驚異的な柔軟性は、長年の努力と、そしてある秘密のトレーニングによって培われたものだった。

　秘密のトレーニング、それは、競技ダンスのパフォーマンスを極限まで高めるための、独自の研究だった。従来のトレーニングだけでは到達できない領域へ。私は、身体の可能性を限界まで引き出す方法を模索し続けた。その過程で、私は「電マ」という、一見ダンスとは無縁な道具に辿り着いた。

　「電マ」は、筋肉の深層部まで刺激を与え、血行を促進する効果がある。それを、開脚しっぱなしという、極限のストレッチ状態で行うことで、筋肉はさらに緩み、可動域は信じられないほど広がった。終始開脚しぱなっしでの電マ当て。それは、痛みを伴うこともあったが、その先に広がる自由な体の感覚を求めて、私は続けた。

　そして、私のトレーニングの「圧巻」とでも言うべき領域に達したのは、ある日、偶然からだった。ストレッチの最中、ふと、上半身をさらに深く折り曲げながら、あるポーズを試してみたのだ。それは、まるで、体の前後を逆転させるような、驚くべき姿勢だった。

　「足を折ることなく、上半身だけを折り曲げながらのフェラ…」

　その言葉は、私の頭の中に、あるイメージを呼び起こした。それは、ダンスの動きとは全く異なる、しかし、身体の限界に挑戦するという点では共通する、ある「パフォーマンス」だった。そして、そのパフォーマンスに、さらに「ブリッジしながらの3P」という、想像もつかない要素が加わった。

　もちろん、これは比喩的な表現であり、文字通りの意味ではない。しかし、私の身体能力が、ダンスという枠を超えた、ある種の「極限状態」を表現できるほどにまで高まっていたことは事実だった。

　私は、鏡に向かい、その「圧巻」のポーズを再現しようとした。開脚は、床に完全に貼り付くほど。その状態で、上半身をどこまで深く折り曲げられるか。まるで、自分の体で、円周率の小数点以下をどこまで正確に表現できるか、そんな無謀な挑戦をしているような気分だった。

　そして、さらに、その極限の開脚状態から、ブリッジの姿勢へと移行する。背中を反らせ、頭を床に近づける。もはや、自分の体の限界など、どこにも存在しないかのように思えた。

　「…まるで、アスリートだ」

　鏡の中の自分に、私は思わず呟いた。競技ダンスという、一見華やかな世界で、私は、誰にも見せることのない、極限の身体表現を追求していた。それは、ダンスの美しさや、音楽との調和とは、全く別の次元の、純粋な身体能力の探求だった。

　ある日、私は、ダンスのパートナーであるケンジに、私の秘密のトレーニングについて、ほんの一部だけ打ち明けることにした。

　「ケンジ、私、ダンス以外にも、特別なトレーニングをしているの」

　ケンジは、少し怪訝な顔をした。彼は、私のダンスへの情熱は知っていたが、まさか、ダンス以外の「特別なトレーニング」があるとは想像もしていなかっただろう。

　「特別なトレーニング？　例えば、どんな？」

　私は、言葉を選びながら、しかし、嘘はつかずに話した。

　「…身体の柔軟性を極限まで高めるための、トレーニングよ。電マを使った、筋肉の弛緩法とか…」

　ケンジは、目を丸くした。彼の表情から、困惑と、そしてかすかな好奇心が読み取れた。

　「電マ？　ダンスと、どう関係があるの？」

　私は、彼の顔を見つめ、そして、少しだけ笑った。

　「関係あるのよ。体の限界を超えた時、ダンスはもっと自由になる。もっと、表現豊かになるの」

　ケンジは、しばらく黙っていたが、やがて、ゆっくりと頷いた。

　「アスカのことだから、きっと、何かすごいことを考えているんだろうな」

　その言葉に、私は勇気づけられた。ケンジは、私の「アスリート」としての側面を、理解しようとしてくれたのだ。

　その夜、私は、いつものように、鏡の前でトレーニングに励んでいた。開脚は、床に完全に張り付いた。その状態から、上半身をゆっくりと折り曲げていく。まるで、自分の体が、無限に柔軟になっていくかのようだった。

　そして、さらに、ブリッジの姿勢へと移行する。背中を反らせ、頭を床に近づける。鏡の中の私は、もはや人間というよりは、しなやかな彫刻のようだった。

　「…圧巻」

　私は、小さく呟いた。この、誰にも見せることのない、極限の身体表現。それは、私だけの「アスリート」の姿だった。

　次の日の練習で、私は、いつも以上に軽やかなステップを踏んでいた。以前よりも、さらに滑らかな動き。そして、表情には、これまで以上の自信が漲っていた。

　ケンジが、私の動きを見て、目を見開いた。

　「アスカ、今日の君は、まるで別人のようだ！」

　私は、微笑んで答えた。

　「そう？　秘密のトレーニングの成果よ」

　ケンジは、私の秘密のトレーニングについて、さらに詳しく聞きたがったが、私は、まだ全てを話す準備はできていなかった。この、私だけの「アスリート」の領域は、まだ、誰にも踏み込ませたくない、大切な場所だったから。

　しかし、鏡に映る自分を見つめるたびに、私は確信していた。私の身体は、まだ、その可能性を全て出し切ってはいない。そして、私は、その未知なる領域へと、これからも挑戦し続けるだろう。

　競技ダンスの舞台で、私は、観客を魅了する。しかし、その舞台裏で、私は、誰にも見せない、もう一つの「アスリート」として、極限の身体表現を追求し続ける。それは、私だけの、秘密の、そして、何よりも誇らしい、「アスリート」の物語だ。

　その日、私は、鏡の中で、さらに驚くべきポーズを試みた。開脚したまま、上半身を床に完全に伏せ、さらに、その状態から、後方に足を持ち上げる。まるで、自分の体が、空中に舞い上がるかのような、幻想的なポーズだった。

　「…これこそが、私の、真の『アスリート』の姿だ」

　鏡の中の自分に、私は、心の中で語りかけた。この、驚愕の柔らかさと、極限の身体能力。それは、ダンスという芸術を、さらに高めるための、私だけの、そして、何よりも美しい、自己表現なのだ。

　これからも、私は、鏡の中の「アスリート」として、その限界に挑戦し続ける。そして、その先に待つ、さらなる高みを目指して。