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## 檻の中の楽園

「おはよう、リサ」

いつものように、早朝の清涼な空気を胸いっぱいに吸い込みながら、僕は彼女の部屋のドアをノックした。返事はすぐに返ってくる。

「はい、ディン！」

開いたドアの向こうには、いつものリサがいた。少し寝癖のついた黒髪、まだ眠気が残る大きな瞳。しかし、その表情には、僕が現れたことへの安堵と、ほんの少しの羞恥心が混じっていた。

「ほら、ほら、早く。遅刻するわよ」

僕は彼女の手を取り、部屋から引き出す。朝食は用意してある。僕が選んだ、栄養バランスを考え抜かれたメニューだ。彼女は黙々とそれを口に運ぶ。この静かな朝の光景は、僕の日常の一部であり、そして、彼女の「楽園」の始まりでもあった。

リサは、僕が彼女に出会う前は、まるで迷子の雛鳥のようだった。職場では、無能だと蔑まれ、先輩たちからは雑用係のように扱われ、おまけに給料までピンはねされていた。彼女の瞳には、常に怯えと諦めが宿っていた。

「君は、自分というものを何も持っていないのか？」

初めて彼女にそう言った時、彼女はただ俯いた。その無力な姿が、僕の心を強く掴んだのだ。僕は、彼女を救うことを決めた。彼女の周りにいる忌まわしい存在から、彼女を解放してあげようと。

「ほら、顔を上げて。僕がそばにいるだろう？」

彼女の顔を覗き込み、優しく微笑む。彼女はゆっくりと顔を上げ、その潤んだ瞳で僕を見つめた。その瞬間、彼女は「僕のもの」になったのだと、確信した。

「これで、大丈夫。あとは僕の言う通りにしてればいい。君は何も心配しなくていいんだ」

僕は彼女の肩を抱き寄せ、耳元で囁く。彼女は小さく頷いた。その反応に、僕は満足感を覚える。彼女は、僕が教えてあげる「楽園」で、ただ幸せに生きていけばいいのだ。

「今日の仕事は、あの資料を整理すること。間違っても、勝手に判断したり、誰かに相談したりしないこと。いいわね？」

僕は彼女に指示を出す。彼女は、まるで僕の言葉を咀嚼するように、ゆっくりと頷いた。

「はい、ディン」

その声は、以前よりも少しだけ力強くなっていた。僕が、彼女に「自信」を与えてあげたのだ。彼女が、僕という存在を必要としている証拠だ。

昼食の時間。僕は、彼女のデスクに、手作りの弁当を届けた。彼女は、同僚たちの冷たい視線から逃れるように、すぐに弁当を開けた。

「美味しい？僕が愛情を込めて作ったんだから、美味しいに決まってるだろう？」

僕は、意図的に彼女の隣に座り、彼女の弁当を覗き込む。彼女は、顔を赤らめながら、小さく「はい」と答えた。

「いい顔をするようになったな。僕がいないと、君は何も出来ないと思っていたけど、僕の教え方が上手いおかげで、こんなにも変わった」

僕は、満足げに彼女の頭を撫でる。彼女は、その手に顔を擦り付けた。まるで、飼いならされた小動物のようだ。

「昔の君は、他の雄にいいように扱われていた。でも、もう大丈夫だ。僕が君を守ってあげる。僕の教えを忠実に守っていれば、誰にも傷つけられることはない」

僕は、彼女の耳元で、低い声で囁く。彼女の肩が、少し震えた。それは、恐怖ではない。僕への、絶対的な信頼の証だ。

「君は、女ではなく、牝（めす）なんだ。僕の言うことを聞く、僕だけの牝。そうだろう？」

僕は、彼女の顔を掴み、その瞳を覗き込む。彼女の瞳は、僕だけを映していた。もう、他の誰かに心を奪われることはない。

「そう、それがいい。君の瞳は、僕だけを見ている時が一番美しい」

僕は、満足げに微笑む。彼女の周りには、僕という「檻」がある。その檻の中で、彼女は安全に、そして僕の望むように生きていく。

夕方、仕事が終わると、僕は彼女を迎えに行く。彼女は、僕の姿を見ると、ぱっと顔を輝かせた。

「ディン！」

彼女は、駆け寄ってきて、僕の腕にしがみつく。その姿は、まるで迷子の子供が母親を見つけたかのようだ。

「ただいま。今日もよく頑張ったな」

僕は、彼女の頭を優しく撫でる。彼女の体温が、僕の手に伝わってくる。

「もう、私、一人じゃ何もできないよ、ディン」

彼女は、甘えるように僕に寄り添う。その声には、迷いも、怯えもない。ただ、僕への絶対的な依存と、安心感だけがあった。

「いいんだよ。一人で何もできないのが、君の「牝」としての証だから。僕が、君の全てを支えてあげる」

僕は、彼女の髪に顔を埋める。彼女の髪からは、僕が選んだシャンプーの香りがする。彼女の服も、僕が選んだものだ。彼女の周りのすべてが、僕の意思で彩られている。

「さあ、帰ろう。君の「楽園」へ」

僕は、彼女の手を引く。彼女は、僕に導かれるまま、軽やかに歩き出す。その足取りは、以前の彼女とは比べ物にならないほど、軽やかで、そして自信に満ちていた。

僕が彼女に与えた「楽園」は、外界から見れば、きっと歪んだものであろう。しかし、彼女自身は、この「楽園」で、満たされた日々を送っている。僕の教え通りに、忠実に、そして純粋に。

「君は、僕がいないと何も出来ない。でも、それでいいんだ。君は、僕の「牝」として、僕の教えたとおりに生きていれば、それだけで幸せなんだから」

僕は、彼女の顔を見つめながら、心の中で呟く。彼女の瞳は、今、僕だけを映し、そして、僕の与えた「楽園」の輝きを宿している。

「さあ、ディン。今日の夜ご飯は何？ディンが選んでくれたものなら、何でも美味しいよ」

彼女は、嬉しそうに僕に尋ねる。その純粋な笑顔が、僕の存在意義を、より一層確かなものにしてくれる。

「今日の夜は、君のために、特別なものを用意してあるんだ。君が、僕だけの「牝」になったことへの、お祝いだよ」

僕は、彼女に微笑みかけ、その手を強く握る。彼女は、期待に胸を膨らませた表情で、僕を見上げる。

この「檻」の中で、彼女は永遠に、僕の「牝」として、至福の時を過ごすのだ。外界の喧騒や、理不尽な人間関係から隔絶された、甘美な、そして絶対的な「楽園」で。