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真新しいマンションのフローリングに、陽が射し込む。紗幕のようなカーテン越しに、春の光が柔らかく部屋を満たす。香織（28）は、まだ新しいソファに腰掛け、幸せなため息をついた。一週間前に、夫・健太（30）と念願の新居に引っ越してきたのだ。広々としたリビング、清潔なキッチン、そして、何より二人だけの空間。ここで、子供を授かりたいと、強く願っていた。

しかし、幸せな時間は長くは続かなかった。健太は、引っ越しから数日後、長期の出張を告げた。新しいプロジェクトで、半年もの間、海外に滞在するというのだ。香織は、落胆を隠せなかった。計画していた妊娠への準備、そして何より、夫との時間を奪われることに、心細さを感じた。

健太が出張して一ヶ月が過ぎた頃、奇妙な出来事が起きた。深夜、マンションの廊下で、男に襲われたのだ。男は、顔にはマスクを、体にフードをかぶっていた。最初は恐怖で身が震えたが、男の粗暴な行為が続くにつれ、不思議な感覚が芽生えてきた。それは、これまで経験したことのない、強烈な快感だった。肉体的な痛みと、抑えきれない興奮が混ざり合った、混沌とした感覚。抵抗しようと試みたが、身体はまるで操られるように、男の思うがままに動いていた。

男は、犯行後、何事もなかったかのように姿を消した。香織は、震える手で、110番通報した。警察は現場検証を行い、聞き込みも行ったが、犯人は捕まらなかった。しかし、香織の心の中に、奇妙な変化が起きていた。事件後、彼女は、日中の穏やかな生活と、夜の自分を隔てたような、二重生活を送るようになった。

昼間は、健太とのビデオ通話で元気な様子を装い、家事をこなし、妊娠のための準備を進める。健太は、香織の少し変わった声色に、不安を感じていたが、具体的なことは聞けずにいた。「少し疲れているだけだろう」と、自分に言い聞かせるように電話を切った。

しかし、夜になると、香織は、襲われた時の記憶を鮮やかに思い出し、再びその快感を求めるようになった。マンションの共有部分、特に誰もいない深夜のエレベーターや、薄暗い駐車場は、彼女の新たな狩場となった。彼女は、そこで出会った見知らぬ男たちに、積極的に近づき、襲われることを求めるようになった。それは、まるで、マンションという空間自体が、彼女自身の肉欲本能を満たすための狩場と化しているかのようだった。

男たちは、香織の異常なまでの受容性、そして、自ら身を委ねる姿に、戸惑いながらも、彼女の求めるままに肉体的な関係を結んだ。彼らは、彼女の身体から発せられる、本能的な官能に、魅入られていく。それぞれの男は、彼女を犯し、そして、満足げにその場を去っていく。香織は、彼らが去った後、一人、満たされた虚脱感と、同時に、次の快楽を求める衝動に駆られていた。

ある夜、香織は、いつものようにマンションの駐車場で男を待っていた。そこに現れたのは、背が高く、筋肉質な男だった。男は、香織に声をかけることなく、ただ、彼女を力強く抱きしめ、激しい行為を始めた。その時の激しさは、これまでのどの男よりも強く、香織の身体は、限界を超えようとしていた。

その時、健太からの電話が鳴った。香織は、電話に出ることをためらった。彼女は、健太に自分の変わり果てた姿、そして、マンションの共有物と化してしまった自分自身を、どう説明すればいいのか分からなかった。

電話を切る直前、健太が心配そうに言った。「香織、何かあったら、いつでも電話してくれよ。一人で抱え込まずに…」

その言葉が、香織の心に突き刺さった。彼女は、自分の行為を止めなければいけない、と初めて強く思った。しかし、同時に、この快楽を捨てることが、彼女にとってどれほど辛いことなのかも、痛感していた。

香織は、電話を切った後、一人、マンションの共有部分に佇み、夜の闇の中に、自分の未来を問い続けた。彼女は、この奇妙な快楽の輪から抜け出すことができるのだろうか。そして、健太との、かつての幸せな日々を取り戻すことはできるのだろうか。彼女の運命は、まだ、決まっていなかった。