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総合婦人肌着メーカー株式会社ワコスケ。その製品開発室室長である田上健吾（48歳）は、今、燃えていた。いや、文字通り燃えているわけではない。だが、彼の内面は、新製品発表に向けたプレゼン会議の熱気と、そして別の、もっと個人的な熱気で、煮えたぎっていた。

会議室は、いつも以上に活気に満ちていた。壁には、様々な色のパンストサンプルがずらりと並んでいる。新製品は「ムレムレシルキー」、その名の通り、究極の滑らかさを追求した高価格帯パンストだ。開発チームは、素材の選定から編み方、縫製に至るまで、あらゆる面で妥協を許さず、その成果は目の前のサンプルに凝縮されていた。

「田上さん、このサンプル、どう思います？」

開発チームのエース、若手デザイナーの鈴木沙織（25歳）が、はにかみながら質問してきた。彼女は、自信作の「ムレムレシルキー・プラチナ」を身に付けている。透き通るような肌触りが、彼女のすらりとした脚をさらに美しく見せていた。

田上は、その美しい脚、そしてプラチナの輝きを放つパンストに目を奪われた。正直に言えば、彼は毎日のようにこのような光景を目の当たりにしていた。新製品プレゼン会議では、女性社員たちが次々とサンプルを試着し、その履き心地や見た目をチェックするのが、いわば“お仕事”の一部だったのだ。そして、その光景は、彼の中年男性の心を揺さぶる。

「…素晴らしいですね、鈴木さん。光沢感、そして…着圧も完璧です」

彼はなんとか平静を装い、プロとしての意見を述べた。しかし、内心は既に荒波の海。彼の視線は、鈴木の脚から離れず、脳内は禁断の欲求でいっぱいだった。

会議は、白熱していた。各チームがそれぞれのサンプルを説明し、その特徴やターゲット層について議論を交わす。開発リーダーの田中美咲（32歳）は、データに基づいた客観的な分析で会議をリードする。一方で、デザインチームのリーダーである佐藤恵子（38歳）は、感性的な視点から、商品の魅力を訴えかける。

その間も、女性社員たちの試着は続く。それぞれのサンプルは、異なる素材、異なる編み方、異なる着圧で、それぞれに魅力があった。田上は、その一つ一つに心を奪われ、同時に、罪悪感に苛まれていた。

彼は、開発室長として、冷静な判断をしなければならない。だが、彼の目は、女性社員たちの美しい脚、そしてパンストに覆われたその魅力的な姿から、なかなか離れることができない。

会議の終盤、田上は、勇気を出して発言した。

「皆さん、素晴らしいですね。全てのサンプル、本当に素晴らしい仕上がりです。しかし、一つだけ言わせてください。私たちは、商品を開発しているだけでなく、女性たちの美しさを引き立てる、そのお手伝いをしているのです。そのことを、常に意識し続けましょう」

彼の言葉には、開発者としての誇りと、同時に、抑えきれない感情が混ざっていた。

会議後、田中は田上に近寄ってきた。

「田上さん、今日のプレゼン、素晴らしかったです。ムレムレシルキー、絶対にヒットしますよ」

田中は、笑顔でそう言って、優しく田上の肩に手を置いた。その温もりと、彼女の言葉が、彼の心を少しだけ落ち着かせた。

しかし、彼の心の奥底では、まだ、抑えきれない熱気が渦巻いていた。ムレムレシルキーの発売日が近づくにつれ、その熱気はさらに増していくことだろう。そして、彼は、その熱気と、同時に、自身の感情と、これからも戦い続けなければならないのだった。彼は、開発室長として、そして一人の男性として。ムレムレ白熱デスカッションは、まだ終わらない。それは、新製品の成功、そして彼の心の葛藤という、二つの戦いが同時に進行している、終わりのない物語の始まりだったのだ。