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## 新宿男子大学生淫裸体連続事件

九月の中旬、新宿は初秋の風が吹き抜ける季節を迎えていた。しかし、その穏やかな空気とは裏腹に、新宿の男子大学生の間で、ある恐怖が蔓延しつつあった。それは、「淫裸体連続事件」と、のちにマスコミが名付けた事件である。

最初の被害者は、早稲田大学の３年生、沢田翔太だった。深夜、新宿の繁華街を一人で歩いていた翔太は、何者かに襲われ、路上で全裸にされた。幸いにも、性的暴行は免れたものの、激しい恐怖と屈辱感に襲われた。警察への届け出の後、翔太は精神的に追い詰められ、大学にも通えなくなってしまった。

それから一週間後、今度は慶應義塾大学の２年生、村田健太が同じように襲われた。村田もまた、深夜に一人で歩いていた際に、何者かに襲われ、路上で全裸にされた。村田は抵抗を試みたが、相手は予想以上に強く、あっけなく制圧されてしまった。事件後、村田は警察に犯人の特徴を語った。「背が高く、細身で、黒いジャケットを着ていた。顔はよく見えなかったが、低い声で何かを呟いていたような気がする」

三件目、四件目と事件は続き、被害者たちは皆、深夜に一人で歩いていた男子大学生だった。犯行方法はどれも酷似しており、襲われた後、全裸にされ、路上に放置されるというものであった。しかし、性的暴行は一切行われていなかった。この奇妙な犯行に、警察は困惑していた。

事件を担当することになったのは、新宿署のベテラン刑事、石黒誠だった。石黒は、事件の共通点から、犯人は何らかの性的な歪みを抱えていると推測した。しかし、単なる性的暴行ではない、この「淫裸体」という行為の意味が、石黒を悩ませた。

捜査は難航した。防犯カメラの映像には、犯人の姿はほとんど捉えられていなかった。目撃情報も曖昧で、頼りになるものは被害者の証言だけだった。被害者たちは、犯人の顔までは確認できていなかった。しかし、共通して語っていたのは、犯人の「異様な興奮」と「低い声」だった。

ある日、石黒は、事件現場の周辺で、奇妙な落書きを発見した。「神聖なる裸体」、「純粋な美」、「解放」といった、一見芸術的な言葉が、汚れた壁にスプレーで書き殴られていた。石黒はこの落書きが、犯人の犯行声明だと考えた。犯人は、単に性的快楽を求めているのではない。何か崇高な目的、あるいは歪んだ美意識に基づいて、この行為を行っているのではないだろうか。

さらに捜査を進める中で、石黒は、あることに気づいた。すべての事件が、新宿御苑の近くで発生していたのだ。新宿御苑は、古くから都民に親しまれる緑豊かな公園だが、夜になると人通りが少なくなる場所もあった。石黒は、犯人が新宿御苑に潜伏しているのではないかと推測した。

そして、ある晩、石黒は新宿御苑に潜入した。夜霧が立ち込め、木々の影が不気味に揺れる中、石黒は一人、警戒しながら苑内を歩いた。すると、遠くから、低い声が聞こえてきた。「神聖なる裸体……純粋な美……」

石黒は、声のする方へゆっくりと近づいていった。そして、そこで見たものは、予想をはるかに超える光景だった。

犯人は、二十歳そこそこの青年だった。青年は、全裸の男子大学生を、まるで芸術作品のように、ライトで照らしていた。青年の顔には、狂気ともいえるような、陶酔の表情が浮かんでいた。青年の傍らには、スプレー缶とスケッチブックが置かれていた。スケッチブックには、裸体の男性が美しく描かれていた。

青年は、大学で美術を専攻する学生だった。彼は、人間の裸体に美を見出し、それを「神聖なる裸体」と呼んでいた。彼は、自分の芸術を表現するために、男子大学生を襲っていたのだ。彼は、性的欲求を満たすためではなく、彼の歪んだ美的感覚を表現するために、彼らを全裸にしていた。それは、彼にとっての「創造行為」だったのだ。

石黒は、青年を逮捕した。青年は、自分の行為を悔やむ様子は全く見せなかった。彼は、自分の芸術を理解してくれない社会に、怒りを抱いていた。

新宿男子大学生淫裸体連続事件は、こうして終結した。しかし、この事件は、人間の心の闇、そして歪んだ美意識の恐ろしさを、人々に改めて認識させた。事件を通して、石黒は、犯人の行動の裏に潜む複雑な心理と、正義とは何かを深く考えさせられることとなった。そして、事件の記憶は、新宿の街に、静かに刻まれたままだった。  事件は解決したものの、石黒の心には、青年の芸術的狂気と、その歪んだ美意識の残像が、長く焼き付いて離れなかった。  それは、彼にとって、決して忘れられない、新宿の夜であった。