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## 汗ばむ季節の秘密

夏が近づき、街には薄着の人が増え始めた。私は、大学の友人の一人が「脇フェチ」であることを知っていた。彼女の名前はサクラ。いつもは明るく社交的で、誰にでも分け隔てなく接するサクラだが、こと「脇」に関しては、独特のこだわりを持っていた。

「ねぇ、私の脇、どう？」

カフェで向かい合って座り、アイスコーヒーを一口飲んだサクラが、唐突にそう言った。恥ずかしそうに、しかしどこか期待するような瞳で私を見つめる。普段のサクラなら、まずありえない行動だ。

「え？ どうって…いつも通り綺麗だけど。」

私の返答に、サクラは少し残念そうな顔をした。

「ううん、そういうことじゃなくて。なんか、こう…変化とか、ない？」

彼女はそう言って、自分の右腕をそっと持ち上げた。薄手のTシャツの袖から、ほんの少しだけ覗く脇の下。そこに、特別な何かがあるわけではない。しかし、サクラの表情は、まるで秘密の宝物でも見せるかのように、真剣だった。

「サクラ、もしかして、また脇毛の処理のこと気にしてるの？」

私は、彼女の「脇フェチ」な一面を、ある程度理解していた。彼女は、SNSで「脇フェチ」という言葉を見つけ、そこから影響を受けたのだと話していた。女性が、意外と見られることを恥ずかしがる部分、それが「脇」であるということに、彼女は妙に共感し、そして魅力を感じていたのだ。

「そう！ それもあるんだけど…なんか、もっとこう、色気というか…。」

サクラは言葉を探すように、視線を宙に彷徨わせた。

「色気？」

「そう！ あのね、夏って汗かくでしょ？ その時、脇ってちょっと湿って、普段と違う匂いとか、質感になるじゃない？ それが…たまらないんだって、そういうのを好きな人たちがいるらしいの。」

彼女は、さらに小声で続けた。

「あと、剃り残しとかも、なんか…人間味があって良くない？」

私は、サクラの言葉に少し呆れながらも、彼女の真剣な様子に笑ってしまった。彼女にとって、脇とは、単なる体の一部ではなく、そこに含まれる様々な要素に魅力を感じる、特別な部位なのだ。

「でも、サクラ。あまり気にしすぎると、かえってストレスになるよ？」

「うーん、それは分かってるんだけどね。でも、なんか、そういう私の一面を肯定してくれる人とか、いたら嬉しいなって思っちゃうんだ。」

彼女の言葉に、私は胸が締め付けられるような感覚を覚えた。サクラは、もしかしたら、自分のこの「フェチ」な一面を、誰かに理解してもらいたい、受け入れてもらいたい、と密かに願っているのかもしれない。

その日の夜、私はサクラから送られてきたメッセージに目を通した。

「今日、電車で隣に座ってた女の子、Tシャツから脇がちょっと見えてて。汗で少し濡れてて、でも、その脇にうっすらと産毛みたいなのが見えたの。思わず見惚れちゃった。あれって、なんか…すごくリアルで、可愛くなかった？」

彼女の興奮が伝わってくるようなメッセージだった。私は、思わず「うん、わかるかも」と返信した。サクラの「脇フェチ」な世界を、少しだけ覗き見ることができたような気がした。

数日後、私たちはサークルの合宿で、海辺のコテージに泊まることになった。夜、皆が寝静まった頃、私は一人、テラスに出ていた。満月が海面を照らし、波の音が心地よく響いている。

ふと、隣に人影を感じて振り返ると、サクラが立っていた。彼女は、部屋着のキャミソール姿で、その腕には、ほんのりと汗の跡が見えた。

「サクラ？ どうしたの？」

「なんか、眠れなくて。」

彼女はそう言って、ゆっくりと右腕を上げた。月明かりに照らされた脇の下は、普段より少しだけ濃い影を落としている。そして、そこには、剃り残したのか、うっすらとした黒い産毛が、繊細な模様を描いていた。

「ねぇ、これ…」

サクラは、私の顔をじっと見つめた。その瞳には、期待と、少しの不安が入り混じっている。

「うん。綺麗だよ。」

私は、正直な気持ちを伝えた。サクラの脇は、特別に美しいわけではない。しかし、その脇には、彼女の繊細さや、自分をさらけ出すことへの恥じらい、そして、そこに惹かれる「フェチ」な自分自身への戸惑い、そういった様々な感情が、静かに宿っているように見えた。

サクラは、私の言葉に、ふっと微笑んだ。その笑顔は、まるで長年の秘密を打ち明け、そして受け入れられたような、穏やかなものだった。

「ありがとう。なんか、ホッとした。」

彼女はそう言って、そっと私に寄り添った。夏の夜風が、私たちの肌を優しく撫でていく。サクラの脇から漂う、微かな汗の匂いが、夏の熱気と共に、私の鼻腔をくすぐった。

その瞬間、私はサクラの「脇フェチ」な世界を、より深く理解できたような気がした。それは、単なる性的な欲求とは少し違う、もっと純粋で、人間的な魅力の探求なのかもしれない。女性が、普段隠している部分に、こそっと美しさや可愛さを見出す。それは、まるで、宝探しのような、甘酸っぱい行為なのかもしれない。

「ねぇ、サクラ。」

「ん？」

「もし、誰かがあなたの脇を見て、素敵だなって思ったら…それは、すごく嬉しいことだよね。」

サクラは、私の言葉に、少し驚いたような顔をして、それから、いたずらっぽく笑った。

「そう？ じゃあ、今度、こっそり誰かの脇、観察してみようかな。」

「それはやめておいた方がいいと思うけど。」

私は、そう言って笑った。サクラの「脇フェチ」は、これからも彼女の秘密であり、そして、彼女をより魅力的にする一面なのだろう。夏の夜は、まだ始まったばかりだ。この夜風のように、私たちの友情も、また少しだけ深まったような気がした。

脇の下。それは、女性が最も恥ずかしがり、しかし、そこには、汗ばむ肌の瑞々しさ、剃り残しの愛らしさ、そして、完璧に手入れされたツルツルとした美しさ、様々な表情が隠されている。そして、それらの表情に、ある者は惹きつけられる。サクラのように。

私は、サクラの肩にそっと手を置いた。彼女の脇の秘密を、そっと、でも確かに、共有できた夜だった。