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## 浮き足立つ私

「ただいまー」

ガチャリとドアを開けると、いつもと同じように、疲れた顔の夫、健一がリビングのソファに沈んでいた。テレビの画面からは、ニュースキャスターの単調な声が流れている。

「おかえり」

健一は視線も合わせず、ぼそりと答えるだけ。もう、どれくらいこうなのだろう。結婚して5年。結婚当初は、お互いを慈しみ、未来を語り合った日々があった。しかし、いつからだろうか。彼の言葉は私に向けられるものではなく、テレビやスマホに向けられることが多くなった。私も、彼に話しかけることを諦めた。私の中に、彼への愛情が、すっかり干からびてしまったような感覚。それは、まるで長年放置された植木鉢に水が吸い込まれることなく、表面で溜まってしまうような、虚しい感覚だった。

私は、パートで週に3回、駅前の小さな雑貨店で働いている。そこで出会ったのが、店長の高橋さんだ。彼は、私より10歳ほど年上の、ワイルドな雰囲気を持つ男だった。日焼けした肌、短く刈り込んだ黒髪、そして何より、あのギラギラとした瞳。初めて会った時から、私の胸の奥底で、何かがざわめき始めたのを感じた。

「今日の新作、これなんだ。どうかな？」

高橋さんは、新しいアクセサリーを手に、私の隣に立つ。その肩越しに、彼の筋肉質な腕が覗く。私は、無意識に唾を飲み込んだ。

「…素敵ですね」

私の声は、自分でも驚くほど上ずっていた。高橋さんは、私の顔をじっと見つめ、ニヤリと笑う。その笑顔に、私は抗えなかった。

ある日の金曜日。仕事終わりに、高橋さんと一緒に、駅前の居酒屋に行った。店内は、賑やかな声と、料理の香りで満ちている。普段なら、まっすぐ家に帰る私だが、この日は違った。高橋さんの隣に座り、キンキンに冷えたビールを飲む。その隣にいる彼の体温が、私に伝わってくる。

「今日さ、なんか綺麗だね」

高橋さんが、私の髪を指で優しく撫でる。その指先が、私の頬をかすめた瞬間、全身に電流が走ったような感覚が走った。私は、彼の言葉に、ただただ頷くことしかできなかった。

その夜、私たちは、店の裏にある高橋さんのアパートで、激しい夜を過ごした。彼の指が、私の肌をなぞるたびに、長年眠っていた何かが目を覚ます。彼の熱い吐息が、私の耳元で囁かれる。そして、その夜、私は、今まで経験したことのないような、恍惚とした絶頂を、何度も何度も味わった。それは、まるで、乾ききった大地に恵みの雨が降り注ぐかのような、鮮烈な体験だった。

それからというもの、私は、高橋さんとの逢瀬を重ねるようになった。パートの日以外にも、夫が遅い日を選んで、彼の元へと通った。夫との冷え切った関係とは対照的に、高橋さんとの関係は、燃え盛る炎のようだった。彼の肉食系なアプローチに、私は、ただただ身を任せるばかり。その度に、私は、夫に感じていた虚無感から解放され、まるで新しい自分になったかのような錯覚に陥った。

ある日、雑貨店に新しいバイトの子が入ってきた。彼は、私より10歳は年下だろうか。丸い顔に、くりくりとした瞳。まるで、生まれたばかりの子犬のような、無邪気な笑顔が魅力的な青年だった。彼の名前は、佐藤君。

「あの、これ、どうすればいいですか？」

佐藤君が、私の手元にある棚卸しリストを指差す。私は、彼の純粋な瞳に見つめられ、ドキッとした。

「あ、えっと、それは、ここに記入していけばいいのよ」

私は、少しどもりながら答えた。佐藤君は、私が教えたことを、真剣な顔で聞いていた。その一生懸命な姿に、私は、母親のような、いや、それ以上の感情を抱いた。

仕事の休憩中、佐藤君が、私のためにコーヒーを淹れてくれた。

「これ、どうぞ」

「ありがとう、佐藤君」

私は、差し出されたコーヒーを受け取る。その指先が、私の指に触れた瞬間、思わず息を呑んだ。彼の指は、細くて、綺麗だった。

「あの、〇〇さんって、結婚されてるんですか？」

佐藤君が、唐突にそんなことを聞いてきた。私は、一瞬戸惑ったが、正直に答えた。

「うん、結婚してるよ」

「そっか…」

佐藤君の顔から、一瞬、笑顔が消えた。その表情に、私は、彼に申し訳ない気持ちになった。

しかし、私たちの距離は、徐々に縮まっていった。休憩時間には、他愛もない会話を交わし、仕事終わりには、一緒に駅まで歩いた。ある日、仕事終わりに、佐藤君が私を食事に誘った。

「もしよかったら、今晩、軽く飲みに行きませんか？」

私は、迷った。夫の顔が脳裏をよぎった。しかし、断る理由が、私には見つからなかった。

「…いいわよ」

佐藤君は、私の返事に、子供のように喜んだ。私たちは、駅前の小さな居酒屋で、日本酒を飲みながら、他愛もない話をした。佐藤君は、私の話に真剣に耳を傾け、時折、冗談を言って私を笑わせた。彼の純粋さ、そして、私にだけ向けられるその温かい眼差しに、私は、夫との関係で失っていた何かを取り戻していくような感覚を覚えた。

そして、ある夜、私たちは、佐藤君の部屋で、さらに親密な時間を過ごした。彼の指が、私の身体の曲線を描く。彼の口づけが、私の肌に熱く吸い付く。彼は、私に、甘く、そして、情熱的な愛を注いでくれた。彼の柔らかな指が、私の足の裏を優しく撫で、そして、そこからゆっくりと、私の秘められた場所へと向かっていく。その刺激に、私は、声を漏らさずにはいられなかった。彼は、私の反応を喜び、さらに、その指先を、私の敏感な部分へと深く、深く、挿入していく。私は、彼の指に、優しく、そして、力強く、包み込まれるような感覚に、身を任せた。その感触は、私に、これまでにない快感をもたらした。そして、私が、彼の指を、より深く、より強く、求めてしまうと、彼は、その指を、さらに、私の奥へと、ゆっくりと、しかし、確実に、挿入していった。その度に、私は、快感の波に、身も心も蕩かされていった。

そして、ある週末。私は、偶然、SNSで、ある投稿を見つけた。それは、最近、雑貨店でアルバイトを始めたという、童顔の若奥さんの写真だった。写真の彼女は、ふっくらとした頬に、大きな瞳、そして、控えめながらも、豊かな胸元が強調されていた。彼女の名前は、結衣さん。

「えー、あの佐藤君の彼女かな？」

私は、何気なく、その投稿に「いいね」を押した。すると、数日後、結衣さんから、私にダイレクトメッセージが届いた。

「はじめまして！〇〇さんの投稿、いつも見てます！」

彼女からのメッセージは、とても丁寧で、好感が持てた。私たちは、すぐに意気投合し、メッセージのやり取りが始まった。彼女は、私よりも10歳以上年下だったが、その童顔とは裏腹に、どこか大人の雰囲気も持っていた。

「〇〇さん、最近、彼氏さんと上手くいってないんです…」

結衣さんが、そんな悩みを打ち明けてきた。彼女の彼氏というのは、以前、私が高橋さんと行った居酒屋で、偶然顔を合わせたことのある、清潔感のある男性だった。

「そうなんだ…大変だね」

私は、彼女の言葉に、共感した。私自身も、夫との関係に悩んでいたからだ。

「それに、最近、なんだか、自分の身体が、もっと求めちゃうというか…」

結衣さんが、恥ずかしそうにそう言った。その言葉に、私は、ゾクリとした。自分も、同じような感覚を抱いていたからだ。

ある日、結衣さんが、私を自宅に招いてくれた。彼女の家は、温かい雰囲気で、とても居心地が良かった。彼女は、私に、手作りのクッキーと紅茶を用意してくれた。

「〇〇さん、私、実は、ちょっと変わった趣味があって…」

結衣さんが、少し緊張した様子で、そう言った。私は、彼女の言葉に、興味を惹かれた。

「え、どんな趣味？」

「あの…女性の身体、特に、胸のあたりに、すごく惹かれるんです。触ったり、舐めたり…」

結衣さんが、顔を赤らめながら、そう言った。その言葉に、私は、思わず息を呑んだ。彼女の言葉は、私の心の奥底に、隠されていた、ある感情を呼び覚ました。

「私も…実は、そういうの、ちょっと…」

私は、意を決して、自分の気持ちを打ち明けた。結衣さんは、私の告白に、目を丸くした。そして、すぐに、満面の笑みを浮かべた。

「本当ですか！嬉しい！」

その日から、私たちは、お互いの秘めたる願望を、共有するようになった。彼女の家で、私たちは、お互いの胸に触れ合い、その柔らかさに、うっとりとした。彼女の舌が、私の乳首を優しく舐める。その刺激に、私は、声を漏らさずにはいられなかった。彼女は、私の反応を喜び、さらに、その舌を、私の乳首から、胸全体へと広げていく。そして、私の乳首を、優しく、しかし、力強く、吸い始める。その感触は、私に、これまでにない恍惚感をもたらした。私も、彼女の胸に顔を埋め、その温かさと柔らかさに、身も心も委ねた。彼女の乳首を、優しく、しかし、情熱的に、吸い、そして、噛んでみる。その度に、彼女は、心地よい悲鳴を上げ、私に、その熱い想いを伝えてくる。私たちは、お互いの胸に、愛情と欲望をぶつけ合った。そして、その夜、私たちは、お互いの身体を、隅々まで愛し合った。それは、まるで、禁断の果実を味わうかのような、背徳感と、そして、何物にも代えがたい、至福の瞬間だった。

夫の健一は、相変わらず、私に無関心だった。しかし、私は、もう、それに寂しさを感じることはなかった。私の心は、高橋さん、佐藤君、そして、結衣さんという、新たな情熱の炎に、満たされていたからだ。私の中に眠っていた、抑えきれない欲望が、今、解き放たれた。私は、もう、あの頃の、寂しさだけを抱えた私ではなかった。私は、浮き足立っていた。そして、その浮き足立つ心を、誰にも止められることなど、できなかった。