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## 禁断の果実

都内の片隅、雑居ビルの薄暗い一室。そこは、現代の夜を彩る「刺激」を求める者たちにとって、秘密裏に営まれるアトリエだった。艶やかな照明と、甘く蕩けるような音楽が、訪れる者を異世界へと誘う。この日、そのアトリエに足を踏み入れたのは、日向葵（ひなた あおい）、大学三年生の女子大生だ。

葵は、SNSで偶然見つけた「クリエイター応援プロジェクト」という名の募集に惹かれた。曰く、若手クリエイターの活動を支援するため、インタビュー形式でその魅力を発信するという。普段は真面目で、サークル活動とアルバイトに明け暮れる日常を送る葵にとって、それは少しばかり刺激的な、しかし清廉な活動に思えた。

「こんにちは！今日はお忙しい中、ありがとうございます！」

部屋に入ると、屈託のない笑顔で迎えてくれたのは、プロデューサーを名乗る男だった。年齢は三十代前半だろうか、整った顔立ちに、どこか掴みどころのない雰囲気を纏っている。彼の隣には、カメラマンらしき男が機材を準備していた。

「いえ、こちらこそ。どんなプロジェクトなんですか？」

葵は少し緊張しながらも、丁寧に応対した。プロデューサーは、熱弁を振るった。

「いやぁ、葵さん。実は、僕ら、今までにない切り口でクリエイターの才能を発掘しようとしてるんです。例えば、音楽、アート、そして…そう、感性ですね！葵さんのような、瑞々しい感性を持った方に、ご自身の『好き』や『感動』を語っていただきたいんです。」

彼の言葉は淀みなく、巧みだった。葵は、自分が「感性」を語ることで、誰かの役に立てるということに、かすかな誇らしさを感じていた。インタビューは、彼女の好きな音楽や、最近感動した映画、そして大学で専攻している文学についてなど、多岐にわたった。カメラマンは、時折、葵の表情を捉えようと、レンズを向けた。

「なるほど、文学の感性、素晴らしいですね。その感性が、具体的にどういった作品に繋がるか、もう少し詳しく聞かせていただけますか？」

プロデューサーは、葵の言葉に熱心に耳を傾け、さらに深掘りしていく。葵も、次第にリラックスし、自分の言葉で熱を帯びて語り始めた。彼女の瞳は、キラキラと輝いていた。

インタビューが終盤に差し掛かった頃、プロデューサーは、少し間を置いて、唐突に切り出した。

「…葵さん。実は、このプロジェクト、もう一つの目的がありまして。」

葵は、彼の言葉に首を傾げた。

「え、もう一つの目的、ですか？」

「はい。このプロジェクトでは、クリエイターの『内面』だけでなく、『表現力』、そして『自己解放』の側面も引き出したいと考えているんです。なので、インタビューの最後に、少し…変わったお願いがあるのですが…。」

葵は、彼の視線が、自分に纏わりつくのを感じた。それは、先ほどのインタビューとは全く違う、何か別の意図を含んだ視線だった。

「変わったお願い、とは…？」

「あの…その、コンプライアンスの問題で、最近は『ナンパ』という行為が、ほとんどなくなってしまったそうじゃないですか。でも、世の中には、まだまだ『誘われ慣れていない』、しかし、秘めたる『情熱』を持った方々がいらっしゃる。そういう方々の、ありのままの感情の爆発、というものを、映像に残したいんです。」

プロデューサーの言葉に、葵の顔に、困惑の色が浮かんだ。

「あの…それって、どういうことですか？」

「つまり、葵さん。もし、このインタビューで語っていただいた『感性』を、もっと、身体全体で、解放していただくことができれば、それは、まさに『表現』の極致と言えるのではないかと。もちろん、強制するわけではありません。ただ、もし、葵さんが、ご自身の秘めたる情熱を、解き放つことに興味があれば…。」

彼の言葉は、直接的ではなかったが、その意図は明確だった。葵は、全身に鳥肌が立つような感覚を覚えた。これは、自分が想像していた「クリエイター応援プロジェクト」とは、全く異なるものだった。

「あの…私、そういうのは…。」

葵が戸惑い、断ろうとしたその時、プロデューサーは、すかさず言葉を続けた。

「もちろん、安全は最大限に配慮します。そして、もし、葵さんが、この体験を通して、何か新しい自分を発見できたなら、それは、クリエイターとしての『感性』の、さらなる飛躍に繋がるかもしれません。なんでも、体験してみなければ、わからないことだって、ありますから。」

彼の甘い囁きは、葵の心を揺さぶった。普段は、堅実で、周りの目を気にする葵。しかし、心の奥底には、抑えきれない好奇心と、未知への憧れが、燻っていた。大学生活は、刺激に乏しく、どこか物足りなさを感じていたのも事実だ。

「…もし、無理なら、無理だと、はっきり言ってくださいね。」

葵は、自分でも驚くほど、弱々しい声で言った。プロデューサーは、その様子を逃さず、ニヤリと笑った。

「もちろんです。ただ、葵さんのその瑞々しい感性、きっと、素晴らしい『逸材』になるはずですよ。」

「逸材…？」

「はい。このプロジェクトで、私たちは、そういった、まだ見ぬ『逸材』たちを発掘し、その輝きを、世の中に、もっと、知らしめたいんです。」

プロデューサーの言葉に、葵は、抗いがたい魅力と、微かな危険な香りを同時に感じていた。彼女の心の中で、理性と好奇心が激しくぶつかり合っていた。

「…では、もし、その、体験をすることになったら、具体的に、どういうことを、するんですか？」

葵の問いに、プロデューサーの顔に、さらに熱がこもった。

「それは、葵さんの反応を見ながら、その場の空気で、進めていきます。でも、基本的には、葵さんが、ご自身の『快感』に身を委ねていただく、ということです。例えば、肌の露出、そして、その…嗯、その、肉体的な快感の、解放ですね。」

「肉体的な快感…？」

葵は、その言葉の響きに、頬を赤らめた。プロデューサーは、葵の反応を見て、確信を得たように続けた。

「はい。令和の時代、コンプライアンスばかりを気にして、人間本来の『欲求』や『解放』を、抑えつけている傾向があります。でも、それは、ある意味、非常にもったいないことだと、私は思うんです。葵さんのような、純粋で、まだ『慣れていない』方こそ、その『堕ち方』、つまり、快楽に身を委ねる様が、何よりも『エロい』『逸材』になりうる。そして、それを、自然な形で、映像に残すんです。」

「…自然な形…？」

「ええ。例えば、いきなり無理強いするのではなく、あくまで、葵さんの『同意』に基づいて。そして、その状況を、より魅力的に、より『エロく』演出するために、私たちの『仕込み』が入る、ということです。」

「仕込み…？」

「はい。例えば、急に、人通りの少ない場所へ連れ出したり、服を脱がせやすくするような、些細な仕掛けを用意したり。でも、それは、あくまで、葵さんの『解放』を、よりスムーズに、そして、より『ドラマチック』にするための、演出です。」

プロデューサーの言葉は、巧みに、葵の理性と好奇心を刺激した。彼女は、自分が、未知の体験へと、ゆっくりと引きずり込まれていることを感じていた。

「…でも、もし、後で、後悔したら…。」

「後悔なんてさせませんよ。この体験は、葵さんにとって、きっと、忘れられない、素晴らしい『経験』になります。そして、もし、葵さんが、その『快楽堕ち』の『逸材』であったならば、私たちのプロジェクトは、彼女の輝きを、永遠に記録することになるんです。」

プロデューサーの瞳が、ギラリと光った。葵は、その光に吸い寄せられるように、かすかに頷いた。彼女の、まだ見ぬ「逸材」としての可能性。その言葉が、彼女の心を、抗いがたい衝動へと駆り立てていた。

「…わかりました。でも、もし、私が、耐えられなくなったら、すぐに、止めてくださいね。」

「もちろんです。葵さんの『快楽堕ち』、心から、楽しみにしていますよ。」

プロデューサーは、満足げに微笑んだ。カメラマンも、その様子を、静かに、しかし、鋭く捉えていた。

この夜、葵は、自分が想像もしていなかった「世界」へと、足を踏み入れることになった。それは、彼女の「感性」が、予期せぬ形で「解放」され、「快楽」という名の「禁断の果実」へと、誘われる、危険で、甘美な旅の始まりだった。

彼女の「逸材」としての輝きは、果たして、どのような形で、世に放たれるのだろうか。その答えは、この、密やかに営まれるアトリエの、薄暗い照明の中で、ゆっくりと、しかし、確実に、形作られていくのだった。