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## 禁断の果実、甘く溶ける熱

　古びた洋館の、重厚な扉を開けるたび、私はあの禁断の香りに包まれた。それは、父の不在を埋めるかのように、母たちの醸し出す淫靡な匂い。艶めかしい花々の香りと、秘められた情熱の匂いが混ざり合い、私の幼い心を不意にざわめかせる。

　前作の記憶が、私の意識の片隅に鮮明に残っていた。あの時、私はまだ物心ついたばかりで、母たちの変貌ぶりをただただ驚きと恐怖をもって見つめるしかなかった。しかし、時が経つにつれ、その記憶は奇妙な憧憬へと姿を変えていった。母たちの、普段の淑やかな姿からは想像もつかないほど官能的な表情。そのすべてが、私の中に未だ見ぬ扉を開く鍵となったのだ。

　そして今、私は再びこの洋館へと足を踏み入れている。父の出張は長引き、留守を預かるのは、三人の母たち。私を産んだ実母、そして父が再婚を重ねるごとに現れた、二人の義母。彼女たちは皆、それぞれに異なる魅力と、そして、私を惹きつけてやまない秘密を抱えていた。

　「あら、健太。おかえりなさい。」

　最初に出迎えてくれたのは、実母だった。絹のような黒髪をゆるくまとめ、柔らかなワンピースを纏っている。普段は優しい微笑みを絶やさない母だが、その瞳の奥には、時折、抗いがたい熱が宿っているのを私は知っていた。

　「ただいま、母さん。」

　私は努めて平静を装い、挨拶を返した。しかし、母が近づいてくるにつれ、あの、独特の香りが強くなる。それは、普段は隠されている、母の秘められた欲望の香りだった。

　「学校はどうだった？」

　母は私の髪を撫でながら、そう尋ねた。その指先が、私の首筋に触れる。ひやりとした感触に、私の心臓が微かに跳ねた。母の指先には、何かの香油のような、甘く蠱惑的な香りが微かに残っていた。

　「…別に。いつも通りだよ。」

　私は視線を逸らした。母の視線は、私の心を見透かすかのように、深く、そして情熱的だった。

　リビングへ向かうと、そこにはもう一人の母がいた。赤毛の、派手なドレスを纏った義母。彼女は、いつも豪快で、奔放な性格だった。

　「健太、おかえり！遅かったじゃない！」

　義母は、大きな声で私を迎え入れた。その声は、まるで獲物を待ち構える獣のようでもあった。

　「ただいま、お義母さん。」

　「もう、そんな堅苦しい挨拶はいいのよ。もっとリラックスしなさい。」

　義母は、私の肩に腕を回し、ぐいと引き寄せた。彼女の体温が、直接私に伝わる。その腕は、普段から鍛えられているのか、しなやかで力強かった。

　「それにしても、健太ったら、ますます男らしくなったわねぇ。」

　義母の言葉は、どこか挑発的だった。彼女は、私の顔をじっと見つめ、ニヤリと笑った。その笑顔は、いつも私をドキドキさせる。

　そして、さらに奥の部屋からは、もう一人の義母の声が聞こえてきた。静かで、物静かな、黒髪の義母。彼女は、いつも書斎にこもり、読書をしている。しかし、その静けさの奥には、誰にも見せぬ激しい情熱を秘めていることを、私は知っていた。

　「健太、どうぞこちらへ。」

　声に呼ばれ、私は書斎へと足を踏み入れた。部屋は、古書に囲まれ、独特のインクの匂いが満ちていた。黒髪の義母は、椅子に座り、本を読んでいた。しかし、私が部屋に入ると、彼女はゆっくりと顔を上げた。

　「お帰りなさい。今日の調子はどう？」

　その声は、まるで眠りから覚めたばかりの猫のように、甘く、そして優しかった。しかし、その瞳の奥には、普段の静けさとはかけ離れた、燃えるような熱が宿っていた。

　「…大丈夫です。」

　私は、義母の隣にそっと座った。部屋の空気は、母たちの気配で、急速に熱を帯びていく。それぞれの母が持つ、独特の香りが混ざり合い、私の全身を包み込む。それは、禁断の果実の甘い誘惑だった。

　その夜、私は母たちの変貌を、再び目の当たりにすることになる。普段の優しく、淑やかな母たちの姿は消え失せ、そこには、欲望に燃え上がる、官能的な女性たちがいた。彼女たちの声は、普段よりも低く、甘く、そして艶めかしい。その吐息は、私の肌を震わせた。

　実母は、私に寄り添い、耳元で囁いた。「健太…あなたは、もう子供じゃないわね。」その言葉と共に、彼女の指先が、私の制服のボタンに触れる。

　赤毛の義母は、私の腕を掴み、強引に引き寄せた。「もっと、私に甘えていいのよ。」彼女の唇が、私の頬に触れる。その感触は、熱く、そして甘かった。

　黒髪の義母は、静かに私を見つめ、そして、その手で私の頬に触れた。「健太…あなたの、その瞳…。」その瞳には、私への、隠しきれない欲望が宿っていた。

　彼女たちの熱に、私の理性は徐々に溶けていった。子供の頃から、母たちの醸し出すこの独特の雰囲気に、私は抗いきれなかった。それは、親子の絆とは違う、もっと原始的で、抗いがたい力だった。

　そして、その夜、私は、母たちの禁断の悦楽に、深く囚われていくことになる。彼女たちの声、彼女たちの吐息、彼女たちの熱。それは、私の中に、未だかつてない快楽の奔流を生み出した。

　「健太…」

　母たちの声が、私を呼ぶ。その声は、まるで甘い毒のように、私の全身に染み渡っていく。私は、抗うことをやめた。この禁断の蜜に、身を委ねることを決めたのだ。

　夜は、まだ始まったばかりだった。この洋館に響き渡る、母たちの甘く、そして危険な囁きは、私の永遠の熱情となって、私の魂を焦がし続けるだろう。それは、私にとって、抗いがたい、禁断の悦楽の始まりだった。

　彼女たちの瞳に宿る炎は、私だけを映し、そして、私を溶かす。私という存在のすべてを、彼女たちの熱情へと捧げる。それは、許されざる愛であり、しかし、私にとって、これほどまでに甘美なものがあるだろうか。

　私は、母たちの熱に抱かれ、この甘く、そして危険な夜を、ただただ受け入れていく。禁断の果実の味は、あまりにも甘く、そして、私を中毒にさせる。この熱は、決して冷めることはないだろう。