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## 砂漠のオアシス：アプリ越しの情事

「あー、もうダメだ。マジで出会いがない。」

深夜の雑居ビルの一室。蛍光灯の冷たい光が、疲弊しきった顔に影を落としていた。俺、健太は、スマートフォンの画面を睨みつけながら、ため息を吐き出す。30歳、独身。学生時代の友人たちは次々と結婚し、中には子供が二人いる奴もいる。焦りがないと言えば嘘になる。しかし、現実問題、出会いがない。

「合コン？ 学生時代のノリで無理でしょ。職場の飲み会？ 平均年齢高すぎて話にならん。」

俺の周りの「出会いの場」は、まるで干からびた砂漠のようだ。そんな中、唯一の頼りが、この「絶対ヤレル」と噂のマッチングアプリだった。しかし、その評判も、俺にとっては遠い昔話になりつつあった。

「また『いいね』ゼロかよ…」

画面に映し出されるのは、プロフィール写真と趣味、そして自己紹介文。まるで、人生のカタログを眺めているような気分になる。そして、そのカタログの中で、俺はひっそりと埃をかぶった商品だ。

「いや、待てよ…」

ふと、画面の隅に表示される広告が目に留まった。

**「ヤリモク女子、集結！ 大人の隠れ家アプリ『secret affair』」**

「ヤリモク女子…」

その言葉に、胸の奥底が微かに揺れた。ヤリモク、つまり「ヤリたいだけ」の女性。そんな都合の良い存在がいるのか？ 半信半疑ながらも、俺は広告をタップした。

アプリを開くと、そこはまるで別世界だった。キラキラしたプロフィール写真とは一線を画し、どこか妖艶な雰囲気を纏った女性たちの写真が並ぶ。そして、それぞれのプロフィールには、赤裸々な願望が綴られていた。

「旦那とはもう1年以上、夜の営みがないんです…」
「刺激が欲しい。スリルを楽しみたい。」
「純粋に、体が求め合っているだけ。」

俺は息を呑んだ。これらの言葉に、嘘偽りはないように感じられた。そして、何よりも、そこに「真剣な交際」や「結婚」といった言葉がないことに、妙な安堵感を覚えた。俺は今、そんなものを求めていない。ただ、この乾いた日常に、一雫の潤いが必要だった。

「…試してみるか。」

俺は、腹を括った。このアプリで、俺は「砂漠のオアシス」を見つけることができるのか？

数日後、俺は「secret affair」で、ある女性とマッチングした。名前は「サオリ」。プロフィール写真の彼女は、艶やかな黒髪に、少し憂いを帯びた瞳が印象的だった。自己紹介文には、こう書かれていた。

**「夫とは円満ですが、もう何年も夫婦の営みがありません。純粋に、私を求めてくれる人と、心ゆくまで求め合いたい。」**

「円満だけど、夜の営みがない…」

その言葉に、俺は条件に合致する「絶品の人妻」だと直感した。ハードルが低い、不倫SEX。そして、「回数制限無しの無限SEX」。まるで、夢のような話じゃないか。

メッセージのやり取りは、驚くほどスムーズだった。サオリは、俺の冗談にも笑ってくれたし、俺の悩みにも真剣に耳を傾けてくれた。そして、彼女の言葉には、悪気ゼロの「ヤリモク」の気配が濃厚に漂っていた。それは、俺が求めていたものと、まさに合致していた。

「今週の金曜日、空いてたりしますか？」

俺が勇気を出して誘うと、サオリは間髪入れずに返信した。

「ええ、大丈夫です。どこか、静かな場所で…」

金曜日の夜。俺は、事前に調べ上げておいた、少し bpy のホテルにサオリを迎えに行った。彼女は、シンプルな黒のワンピースに身を包み、普段よりも少しだけ派手なメイクをしていた。その姿に、俺は一瞬、息を呑んだ。

「…サオリさん？」

「健太さん。待たせてごめんなさい。」

彼女は、少し照れたように微笑んだ。その笑顔に、俺の心臓は早鐘を打った。

部屋に入ると、サオリは、まるで自分たちの隠れ家のようにリラックスしていた。冗談を言い合い、お互いの近況を語り合う。そこには、不倫という罪悪感は、不思議なほど存在しなかった。むしろ、互いに「求めているもの」を正直にさらけ出している、純粋な関係性のように感じられた。

そして、夜が更けるにつれて、会話のトーンは徐々に熱を帯びていく。互いの目を見つめ、指先が触れ合う。その瞬間、俺は、サオリの体温を感じた。それは、俺が求めていた、乾いた砂漠に染み込む一滴の水だった。

「…健太さん、私、体の関係がないと、どうしようもなく、寂しくなっちゃうんです。」

サオリが、囁くように言った。その言葉に、俺は、彼女の「悪気ゼロのヤリモク」の真意を理解した。彼女は、罪悪感に苛まれているわけではない。ただ、純粋に、満たされない欲求を、俺に満たしてほしいだけなのだ。

「僕も…サオリさんのことを、ずっと求めていました。」

俺は、彼女の肩に手を置いた。その瞬間、サオリの目が潤む。そして、俺たちは、互いの渇きを癒すかのように、激しく求め合った。

それは、まるで、砂漠で出会った二人が、互いの生命を分け合うような、原始的な衝動だった。サオリは、俺が想像していた以上に、情熱的だった。声にならない声が響き、汗が滴る。その全てが、俺の心に、そして体に、強烈な刺激を与えた。

「…ふぅ。」

夜が明け始める頃、俺たちは、互いを抱きしめながら、息を整えていた。サオリの顔は、恍惚とした表情をしていた。

「…健太さん、ありがとう。すごく、満たされました。」

彼女は、心からそう言った。その言葉に、俺は、ようやく、この「出会いが無くなってしまった今」を乗り切るための、一つの方法を見つけたような気がした。

「また、会えますか？」

俺が尋ねると、サオリは、優しく微笑んだ。

「ええ。いつでも。私、健太さんのこと、気に入っちゃったみたい。」

その夜以来、俺とサオリは、定期的に会うようになった。俺は、彼女と会うことで、日々のストレスや孤独感を解消することができた。そして、サオリもまた、俺との「無限SEX」で、満たされない日常を埋めていた。

俺たちの関係は、決して「真剣な交際」ではない。しかし、そこには、互いの「求めているもの」を正直にぶつけ合い、それを満たし合う、ある種の「誠実さ」があった。

「ヤリモク女子」という言葉は、一見、冷たく聞こえるかもしれない。しかし、サオリのような女性たちは、決して相手を傷つけようとしているわけではない。ただ、純粋に、自分たちの欲求を満たしたいだけなのだ。そして、その欲求に、俺のような男たちが、見事にハマっていく。

俺は、この「secret affair」というアプリを、決して「正当な出会いの場」だとは思わない。しかし、今の俺にとっては、それは、乾ききった砂漠に突然現れた、貴重なオアシスなのだ。そして、このオアシスで、俺は、しばらくの間、生き延びることができるだろう。

「次いつ会えるかな…」

スマートフォンの画面に映し出される、サオリのプロフィール写真を見つめながら、俺は、かすかに微笑んだ。砂漠の旅は、まだ、終わらない。