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■ 鉄の乙女と雷鳴の獣

夜の帳が降り、巨大なスタジアムの喧騒が空気を震わせる。そこは、熱狂と歓声、そして汗と血の匂いが混ざり合う、男と女がリング上で全てを賭けてぶつかり合う、夢の舞台B-1。最強の称号を求める者たちが、己の限界を超え、進化系プロスタイルバトルに挑む。

今宵、その熱狂の幕開けを飾るのは、第一試合。春日なみ、その小さな体躯からは想像もつかないほどの闘志を燃やす「鉄の乙女」。対するは、筋肉隆々とした巨漢、ホセ。「雷鳴の獣」の異名を持つ彼は、その圧倒的なパワーで数々の強豪を薙ぎ倒してきた。

リングアナウンサーの野太い声が響き渡る。「さあ、皆様！今宵、B-1の歴史に新たな一ページが刻まれます！第一試合！予測不能の激突！春日なみ選手、対！ホセ選手！」

観客席から割れんばかりの拍手と歓声が上がる。なみは、黒いコスチュームに身を包み、背中に大きく「鉄」と刺繍された帯を締めている。その瞳は、まるで研ぎ澄まされた刃のように鋭く、一点を見据えている。一方のホセは、赤いトランクスに身を包み、全身に刻まれた傷跡が彼の激闘の歴史を物語っている。彼は、腕を振り上げ、観客に吠えるようにアピールした。

ゴングが鳴り響く。

ホセが、その巨体を揺らしながらなみに突進する。しかし、なみは冷静だった。ホセの繰り出す重いパンチを、紙一重でかわす。まるで、弾丸を避けるかのような身のこなしだ。観客は息を呑む。

「遅い！」

なみが鋭く叫び、ホセの脇腹に素早い肘打ちを叩き込む。キン、と鈍い音が響く。ホセは呻き声を上げ、体勢を崩した。

「なんだ、この女は！」

ホセは驚愕の表情を浮かべた。彼の想像を遥かに超えるスピードと正確さ。これまで、彼のパワーの前に屈してきた相手は数知れず。しかし、なみは、そのパワーを的確に、そして効果的に無効化していく。

なみは、ホセの隙を見逃さない。連続したパンチとキックで、ホセの体勢をさらに揺さぶる。ホセは、なみの攻撃に翻弄され、まるで巨大な鉄塊に叩きつけられているかのような衝撃を受けていた。

「くそっ！」

ホセは怒りを燃え上がらせ、渾身の右ストレートを繰り出した。それは、まさに雷鳴のごとき一撃。しかし、なみは、その軌道を読み切っていた。寸前で体を反転させ、ホセの拳は空を切る。

そして、なみは、ホセの開いた懐に飛び込み、渾身の回し蹴りを放った。

ドォン！

乾いた音が会場に響き渡る。ホセの巨体が、ぐらりと大きく揺れた。

「まだだ…まだ終わらん！」

ホセは、歯を食いしばり、なんとか立ち上がろうとする。しかし、なみは、その隙を見逃さなかった。リング中央で、なみは大きく息を吸い込み、両手を掲げた。

「鉄よ、力を！」

なみの叫びと共に、彼女の全身に、まるで鋼鉄のような輝きが宿る。彼女の拳が、まるで鉄塊のように重みを増した。

「必殺！アイアン・ハンマー！」

なみの拳が、ホセの顔面に叩きつけられた。それは、まるで鋼鉄のハンマーが打ち下ろされるかのような衝撃。ホセの体は、大きく弾け飛び、リングに倒れ込んだ。

レフェリーがカウントを始める。

「ワン！ツー！スリー！…テン！」

ゴング。

第一試合、春日なみ選手の勝利！

会場は、凄まじい歓声に包まれた。なみは、勝利の雄叫びを上げ、リングを後にした。その小さな体から放たれるオーラは、すでに圧倒的な存在感を放っていた。

「さて、次はいよいよ第二試合だ！」

リングアナウンサーの声が、再び会場を沸かせる。

第二試合。乙音るい、その透明感のある美貌とは裏腹に、リング上では獰猛な獣へと変貌する「魔性の蝶」。対するは、ロドリゲス。彼は、これまで数々の強豪を苦しめてきた、変幻自在のファイトスタイルを持つ「影の狩人」。

るい、黒いシルクのようなコスチュームに身を包み、その長い黒髪をなびかせながらリングに現れた。彼女の歩き方は、まるで優雅な蝶の舞。しかし、その瞳には、獲物を狙うかのような鋭い光が宿っていた。

ロドリゲスは、迷彩柄のトランクスを履き、その顔には傷跡がいくつも刻まれている。彼は、リングサイドをゆっくりと見渡し、不敵な笑みを浮かべた。

ゴング。

ロドリゲスは、姿を消すかのように素早く動き出した。まるで、影のようにリングを駆け巡り、るいの隙を狙う。るいは、その予測不能な動きに、一瞬惑わされたかのように見えた。

「どこだ…！」

るいが、周囲を見渡す。ロドリゲスは、まるで幻のように、その姿を現したり隠したりする。

しかし、るいは、ただの美女ファイターではなかった。彼女の五感は、研ぎ澄まされており、ロドリゲスの微かな気配さえも捉えることができた。

「見えた…！」

るいが、一瞬だけ現れたロドリゲスに、素早いアッパーカットを繰り出した。ロドリゲスは、それをなんとかかわしたが、その顔に冷や汗が滲む。

「やるな、蝶さん…」

ロドリゲスは、低く呟いた。彼は、これまで数々の相手を翻弄してきたが、るいは、その戦術を容易に見抜いていく。

るいは、ロドリゲスの動きを読み、その距離を詰めていく。彼女の攻撃は、まるで蝶の羽ばたきのように予測不能でありながら、その一撃には鋭い毒がある。

ロドリゲスは、るいの攻撃をかわしながら、徐々に追い詰められていく。彼は、必殺技を繰り出そうと、体勢を整えようとする。

「これで終わりだ…！」

ロドリゲスは、両手を構え、独特の構えを見せる。それは、相手を混乱させるための、彼の得意技。

しかし、るいは、それに動じなかった。彼女は、ロドリゲスの動きの裏に隠された意図を読み取った。

「甘い！」

るいは、ロドリゲスの攻撃が繰り出される前に、その懐に飛び込んだ。そして、彼女の全身に、妖しい光が宿る。

「魔性の舞踏！」

るいの繰り出す連撃は、まるで蜘蛛の糸のようにロドリゲスを絡め取る。パンチ、キック、そして関節技。ロドリゲスは、その全てをかわすことができず、身動きが取れなくなっていく。

「くそっ…！」

ロドリゲスは、抵抗しようとするが、るいの攻撃は止まらない。彼女の繰り出す技は、美しくも恐ろしく、まるで獲物をいたぶるかのような残虐さすら感じさせる。

そして、るいは、ロドリゲスの首に腕を回し、締め上げた。

「ギブアップだ！」

レフェリーが、ロドリゲスの意思を確認する。しかし、ロドリゲスは、歯を食いしばり、抵抗を続ける。

「まだ…！」

しかし、るいの力は、それを許さない。彼女の瞳に、獲物を仕留める冷たい光が宿った。

「これが、私の…「魔性の蝶」…！」

るいの力は、さらに増していく。ロドリゲスの顔は、みるみるうちに赤くなり、苦悶の表情を浮かべた。

「ギブアップ！」

ついに、ロドリゲスは、ギブアップを宣言した。

レフェリーが、るいを勝利者として宣言する。

第二試合、乙音るい選手の勝利！

会場は、再び熱狂に包まれた。なみとるい、二人の勝利者。彼女たちは、B-1の舞台で、己の強さを証明した。

「さあ、皆様！今宵も、予測不能の激闘が繰り広げられました！このB-1、進化系プロスタイルバトルは、まだまだ続きます！次なる試合も、乞うご期待！」

リングアナウンサーの声が、高らかに響き渡る。鉄の乙女と魔性の蝶。男も女も関係ない、純粋な強さを求める者たちの戦いは、まだ始まったばかりだ。B-1の頂点、最強の称号を掴むのは、一体誰なのか。観客たちは、その答えを求めて、夜空を見上げた。