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■ 秘境の開拓者

真夜中の静寂を切り裂くように、コンコン、と控えめなノックの音が響いた。玲奈は、ソファに沈み込み、読みかけの本から顔を上げた。時計は午前二時を指している。この時間に訪ねてくる人間など、限られている。

「どちら様でしょう？」

努めて平静を装った声で応えると、ドアの外から、少し掠れた、しかし確かな色香を帯びた声が返ってきた。

「……開けて、玲奈。私だよ、美月」

美月。その名前を聞いた瞬間、玲奈の心臓は微かに跳ねた。美月は、玲奈の大学時代の先輩で、何よりもその妖艶な魅力で周囲を魅了する女性だった。その美しさは、単なる容姿の良さではなく、内側から溢れ出るような、抗いがたい色香と、どこか危うさを孕んだ空気が混じり合い、人々を惹きつけてやまない。

玲奈はゆっくりと立ち上がり、ドアを開けた。そこに立っていた美月は、期待通りの、いや、期待を遥かに超える姿だった。夜の街のネオンを浴びて、その肌は陶器のように滑らかで、艶やかな黒髪は肩にかかり、きらめいていた。そして、彼女が纏っていたのは、普段の彼女ならありえないような、大胆なデザインの、しかし洗練された黒いランジェリーだった。シルクの光沢が、彼女の肌の白さを一層際立たせ、細いストラップが肩に食い込み、胸元は、はっきりと、しかし上品に、その豊かさを主張していた。

「こんな時間に、どうしたの？」

玲奈は、思わず息を呑み、儘ならない言葉を紡いだ。美月の纏うランジェリーが、夜の闇に溶け込み、その曲線美を際立たせている。それは、まるで秘められた宝物のように、隠されているからこそ、その存在が強烈な引力を放っていた。

「どうしても、あなたに会いたかったの」

美月は、そう言いながら、玲奈の腕にそっと手を伸ばした。その指先が触れた瞬間、玲奈の体には、微かな電気のような、しかし心地よい熱が走った。美月の瞳は、夜の闇のように深く、しかしその奥には、言葉にならない欲望が燃えているのが見えた。

「……でも、その格好は……」

玲奈は、戸惑いを隠せなかった。美月が、こんなにも大胆な姿で現れるなんて、想像もしていなかった。しかし、その姿に、抗いがたい魅力を感じている自分もいた。それは、まるで極限まで磨かれた芸術品のように、見る者の理性を麻痺させる力を持っていた。

「ふふ、驚いた？ これが、私の一番のお気に入りなの」

美月は、悪戯っぽく微笑んだ。その唇の動き一つで、玲奈の理性は、まるで砂の城のように崩れ去りそうだった。

「着ているだけで、なんだか自分でもドキドキしてしまうの。あなたにも、このドキドキを共有したくて」

美月は、玲奈の部屋にゆっくりと足を踏み入れた。彼女の歩くたびに、シルクが擦れる微かな音が、静寂に響く。その音さえも、玲奈の心を掻き乱すBGMのように感じられた。

「だって、玲奈。普段は、こんなにも隠されているもの。それが、こうして、少しだけ、覗いてしまうだけで、どんなにも興奮するものか、あなたも知っているでしょう？」

美月は、玲奈の顔を覗き込んだ。その瞳には、純粋な好奇心と、計算された誘惑が入り混じっていた。彼女の言葉は、玲奈の心の奥底に眠っていた、隠された欲望を呼び覚ますようだった。

「まるで、秘境の入り口みたい。開かれるのを、ただひたすら待っている……」

美月は、自分の胸元にそっと手を当てた。シルクの生地越しに、彼女の肌の温かさが伝わってくる。玲奈は、その細い指先が、ランジェリーのレースをそっと撫でるのを見た。それは、まるで繊細な地図をなぞるかのようで、その先に広がるであろう「秘境」への期待感を煽った。

「そして、そこを覗いてしまったら、もう、引き返せない。理性が蒸発してしまうほどの、興奮に包まれてしまう……」

美月は、玲奈の肩にそっと手を置いた。その温かい感触に、玲奈の全身が痺れるようだった。彼女の吐息が、玲奈の頬にかかり、甘く、それでいて挑発的な香りが鼻腔をくすぐった。

「抱きたくなるでしょう？ あなたも、そうでしょ？」

美月は、挑戦的な視線を玲奈に投げかけた。その言葉に、玲奈は反論できなかった。いや、反論する気など、毛頭なかった。美月の纏う、そのエロくも上品なセクシーランジェリーは、彼女の魅力を極限まで引き出し、玲奈の理性を溶かし、ただただ、彼女を抱きたいという純粋な欲望だけを掻き立てていた。

「これは、まさに、エロ下着クルーズね」

玲奈は、かすかに震える声で呟いた。美月は、その言葉に満足そうに微笑んだ。

「そう。そして、このクルーズの終着点は、どこだと思います？」

美月は、玲奈の耳元に顔を寄せた。その吐息が、玲奈の鼓膜をくすぐる。

「おそらく、あなたも私と同じ、至高のドスケベSEXに辿り着くことでしょう」

美月は、そう言いながら、玲奈の首筋にそっと唇を寄せた。その軽やかな感触に、玲奈の全身に電流が走った。彼女の纏うランジェリーのシルクが、肌を滑る微かな音。それは、この夜が、ただの夜ではないことを、そして、これから始まる「秘境の開拓」が、どれほど過激で、どれほど官能的なものになるかを、雄弁に物語っていた。

「株式会社ケイ・エム・プロデュース……」

玲奈は、どこからか聞こえてきたような、そんな言葉を頭の中で反芻した。この夜は、きっと、想像もつかないほどの、濃厚な体験へと導いてくれるだろう。美月という名の、妖艶な航海士に導かれ、玲奈は、自身の中に眠る、未知なる欲望の海へと、深く、深く、漕ぎ出していくのだった。

（了）