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■ 禁断の社訓

青葉が萌え出し、新年度の空気が街に満ちていた。そんな中、広告代理店「パッション・イノベーション」のオフィスは、例年とは異質な緊張感に包まれていた。それは、新入社員研修初日という高揚感ではなかった。むしろ、これから始まる未知なる試練への、恐怖にも似た期待感だった。

「さあ、皆さん、ようこそパッション・イノベーションへ！」

壇上に現れたのは、藤宮、山田、そして佐藤。いずれも30代後半、広告業界で名を馳せる辣腕プロデューサーたちだ。しかし、彼女たちの姿は、一般的なビジネスウーマンのそれとはかけ離れていた。藤宮は胸元が大胆に開いたタイトなスーツ、山田は体にぴったりとフィットしたミニスカート、佐藤はすらりとした脚線美が際立つパンツスーツ。そして何よりも、彼女たちの瞳に宿る、自信と、どこか妖しい光が、新入社員たちの背筋を凍らせた。

「さて、皆さんはこれから、このパッション・イノベーションで、最高のクリエイティブを追求していくことになります。そのために、我々が最も大切にしていること、それは…」

藤宮がゆっくりと口を開いた。その声は、まるで甘く毒のある香水のように、オフィス全体を包み込む。

「『射精』です！」

静寂。新入社員たちの顔に、困惑と、理解不能という文字が浮かび上がる。

「え…？ 何か、聞き間違いでは…？」
「射精…ですか？」

山田が、艶やかな笑みを浮かべて、さらに畳みかける。

「そうよ、射精！ 我々の社訓はこうよ！」

彼女は、ホワイトボードに指をさした。そこには、赤々とした文字で、こう記されていた。

【パッション・イノベーション 社訓】

１．射精
２．射精！
３．射精で
４．射精で
５．射精！

「ひたすら、射精し続けること。これが、我々パッション・イノベーションのモットーであり、存在意義なのよ！」

佐藤が、擎げた右手を、ゆっくりと握りしめる。

「つまり、君たちは、我々ドSの爆乳女上司たちから、徹底的に『射精』させられる運命にある、ということです。理解できた？」

言葉の意味を理解するのに、数秒を要した。いや、理解したところで、それが現実になるということが、信じがたい。

「あの、つまり、これは比喩…ですよね？」
一人の新入社員が、震える声で尋ねた。

藤宮は、ゆっくりと首を横に振る。

「比喩？ いいえ、これは至極、文字通りの意味よ。君たちは、我々の情熱に、徹底的に『射精』させられる。そして、その『射精』の回数こそが、君たちの評価に直結するの。」

「回数…ですか？」
「そう。我々の目標は、新入社員一人あたり、最低でも『60発』。これを達成できなければ、君たちは、この会社にいられない。」

60発。それは、一体何を指すのか。新入社員たちは、顔を見合わせる。

「4分に1発、射精し続ける計算になるわね。」
山田が、指を折りながら、冷ややかに言った。

「精子が枯渇するまで、天に召されるまで、我々は君たちを追い詰める。それが、パッション・イノベーションの流儀よ。」

研修初日。まだ、名刺も、席も、与えられていない新入社員たちは、突然、聞くも恐ろしい「社訓」と、それに基づく「ノルマ」を突きつけられた。期待と興奮に満ちていたはずの空気が、一瞬にして、絶望と、そして奇妙な興奮に塗り替えられていく。

「さて、まずは自己紹介からね。君の名前は？」
藤宮は、一番前に座っていた、細身の青年、高橋に目を向けた。

「た、高橋です。高橋健太です。」
「高橋君。君から、最初の『射精』を披露してもらうわ。」

「えっ！？ 今からですか？」
「当たり前でしょ？ 研修は、もう始まっているのよ。」

藤宮は、高橋の目の前に、小さなノートパソコンを置いた。画面には、見慣れないアプリが開かれている。

「このアプリは、君の『射精』を記録するシステムよ。クリックするたびに、カウントが増えていく。さあ、高橋君。君の情熱を、ここで解き放つのよ。」

高橋は、混乱しながらも、震える手でマウスを掴む。画面上の、大きく表示された「射精」ボタン。それを、クリックする。

「ピコン」

小さな電子音が響く。画面上の数字が「１」になった。

「ふむ。いい滑り出しね。でも、これだけじゃ足りないわ。」
山田が、高橋の肩に手を置く。その手は、意外にも力強かった。

「もっと、激しく。もっと、情熱的に。君の全てのエネルギーを、この『射精』という行為に、注ぎ込むのよ！」

山田は、高橋の耳元で囁いた。その息遣いが、高橋の顔に熱を帯びさせる。

「いいわ、高橋君。もっと、もっと、君の情熱をぶつけるのよ！」
佐藤も、高橋の背後から、激を飛ばす。

高橋は、半ば強引に、マウスを連打し始めた。
「ピコン、ピコン、ピコン…！」

画面上の数字が、みるみるうちに増えていく。2、3、4…
しかし、それだけでは、彼女たちの期待に応えられないことは、誰の目にも明らかだった。

「遅いわよ、高橋君！ まだまだ、こんなもんじゃないでしょ！」
藤宮が、高橋の頬を優しく、しかし力強く叩いた。

「君の、あの、秘めた情熱は、どこにあるの？ ここで、全てを出し切るのよ！」

彼女たちの言葉は、直接的で、露骨だった。しかし、その言葉の裏には、単なる指示以上の、何かがあった。それは、彼女たちが、この「射精」という言葉に込めた、ある種の信念のようなものだったのかもしれない。

高橋は、汗だくになりながら、マウスを操作し続けた。10、20、30…
しかし、彼の指は、次第に重くなり、思考も鈍くなっていく。

「もう、無理です…」
高橋は、力なくマウスから手を離した。画面上の数字は、32。目標の半分にも満たない。

「あら、もう終わり？ まだ、まだ、君のポテンシャルは、こんなものじゃないはずよ？」
藤宮は、高橋の額に手を当てる。その熱に、彼女は満足そうに頷いた。

「いいわ。今日は、ここまで。でも、明日からは、もっと、もっと、君の限界を超えさせるから。覚悟しておきなさい。」

彼女たちの「ドS」ぶりは、初日から、その片鱗を見せつけていた。新入社員たちは、これから始まる日々への恐怖と、それでも、どこか惹きつけられるような、不思議な感情に包まれていた。

「さて、次はこの子ね。」
山田が、隣に座っていた、物静かな印象の女性、田中美咲に目を向けた。

「田中さん。あなたは、どんな『射精』を見せてくれるのかしら？ 期待しているわよ。」

田中は、顔を赤くしながらも、静かに頷いた。彼女の瞳には、高橋のような絶望ではなく、むしろ、秘めた闘志のようなものが宿っていた。

「射精、ですか…」
田中は、小さく呟いた。

「ええ、射精よ。君の、内なる情熱を、余すところなく、爆発させるのよ。」
佐藤が、田中の顔を覗き込む。

「我々は、君たちの、まだ見ぬ才能を引き出すために、ここにいる。だから、遠慮はいらない。全てを、出し尽くしなさい。」

田中は、覚悟を決めたように、ノートパソコンの前に座った。高橋とは違い、彼女の指は、迷いなくマウスを掴んだ。

「ピコン！」

最初の「射精」は、静かだった。しかし、その後の彼女の「射精」は、高橋とは全く異なった。彼女は、ただマウスをクリックするのではなく、その一クリック一クリックに、感情を込めているように見えた。

「ピコン、ピコン、ピコン…！」

彼女の指は、素早く、そして正確に動く。時折、彼女の顔に、達成感とも、苦痛ともつかない表情が浮かぶ。

「あら、田中さん、なかなかやるじゃない。」
藤宮が、感心したように呟いた。

「そうね、彼女の『射精』には、深みがあるわ。」
山田も、彼女の様子を興味深そうに観察している。

田中は、息を整えながら、「射精」を続けた。50、55、60…

「60発、達成です。」
田中は、静かに報告した。

「素晴らしい！ 流石ね、田中さん！」
藤宮は、歓声を上げた。

「しかし、これで終わりではないのよ？」
佐藤が、意味深な笑みを浮かべた。

「君たちの『射精』は、まだまだ始まったばかり。我々が、君たちから、真の『射精』を引き出すまで、決して、止めることはない。」

田中は、安堵の表情を見せた後、再び、彼女たちの言葉に、緊張感を走らせた。

「60発、おめでとう。でも、それは、あくまでスタートラインよ。」
藤宮は、田中の肩に手を置いた。

「我々は、君たちに、最終的に、『天に召される至極の○問』まで、連れて行きたいの。」
「天に召される…？」

新入社員たちは、その言葉の意味を、まだ完全には理解できていなかった。しかし、彼女たちの瞳に宿る、強烈な光と、その言葉の響きは、彼らの心に、抗いがたい魅力を放っていた。

「さあ、高橋君、田中さん。そして、ここにいる全ての皆さん。」
藤宮は、オフィス全体を見渡した。

「君たちの『射精』の旅は、今、始まったばかり。我々が、君たちを、どこまで連れて行けるのか。そして、君たちが、どこまで『射精』できるのか。それを、確かめていきましょう。」

青葉が芽吹く新年度。パッション・イノベーションのオフィスでは、常識を覆す「社訓」のもと、新入社員たちの、壮絶で、そして官能的な「射精」の日々が、幕を開けようとしていた。彼らは、これから、肉体的、精神的な限界を超え、未知なる領域へと誘われていくのだろう。その先に、一体何が待っているのか。それは、誰にも、まだ、分からない。