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■ 天使の戯れ、神の涙

リズ・オーシャンの名前を初めて聞いたのは、まだ十代の終わり頃だった。SNSのタイムラインを流れるように現れた、そのあまりにも完璧な美貌に、私は思わず息を呑んだ。ハンガリー出身という彼女は、まるで宝石を散りばめたような瞳、絹糸のように滑らかなブロンドの髪、そしてどこか儚げで、しかし力強い意志を感じさせる唇を持っていた。360度どこから見ても完璧、という形容詞がこれほどまでに似合う人間を、私は他に見たことがなかった。

彼女の投稿は、いつもキラキラと輝いていた。色とりどりの花に囲まれて微笑む姿、青い空の下で楽しそうに駆け回る姿、そして、時折垣間見える、ちょっぴりいたずらっぽい笑顔。それらすべてが、まるで絵画のように美しく、私は彼女の虜になった。仕事に追われ、日々現実の泥臭さにまみれていた私の心に、リズは清涼な風のように吹き込んできたのだ。

「神様、ごめんなさい。」

いつか、そんな言葉を口にする日が来るかもしれない、と漠然と思っていた。彼女があまりにも完璧すぎるから、きっと神様も彼女の創造に全力を注ぎすぎたのだろう。だから、人間界の秩序や常識なんて、彼女には適用されないのではないか、と。

そして、その予感は、ある夜、現実のものとなった。

その夜、私はいつものように、リズのSNSを眺めていた。更新されたばかりの投稿は、彼女がどこかのバーで、グラスを片手に微笑んでいる写真だった。いつもと変わらない、圧倒的な美しさ。しかし、その横に添えられた短いキャプションに、私は目を疑った。

「天使と、とんでもない夜を過ごしてしまった。神様、ごめんなさい。」

最初は何かの比喩表現なのだろうと思った。でも、彼女の投稿は、いつもストレートで、飾り気がない。そして、その写真の背景には、ぼんやりとだが、どこか非現実的な光が揺らめいていた。まるで、この世のものではない、異世界に繋がる扉が開いたかのような、そんな感覚。

その投稿は、あっという間に削除された。しかし、私の心には、強烈な印象として刻み込まれた。「天使」。それは、一体どういう意味なのだろうか。

数日後、私の元に、一通のメールが届いた。差出人は、リズ・オーシャン。添付されていたのは、一枚の写真と、短いメッセージだった。

「あなたにお話ししたいことがあります。」

写真には、リズが、真夜中の街の屋上で、こちらに微笑みかけている姿が写っていた。その瞳は、いつも以上に神秘的な輝きを放っていた。

彼女に会う約束をした。指定された場所は、夜景が美しい、少し辺鄙な高台にあるカフェだった。期待と不安が入り混じった気持ちで、私は指定された時間に向かった。

カフェのテラス席に座るリズは、写真で見るよりもさらに美しかった。夜風に髪をなびかせ、柔らかな光に包まれた彼女は、まさに天使のようだった。そして、その隣には、誰かが座っていた。

その人物は、言葉で表現するのが難しい。人間の形をしてはいるが、その全身から放たれるオーラが、リズとは全く異質だった。ほんのりと金色に光る肌、そして、その瞳は、まるで星屑を散りばめたような、深遠な輝きを湛えていた。

「初めまして、私はアザゼルです。」

その声は、心地よい低音で、しかしどこか遠い響きを持っていた。

リズが、私の隣に座った。彼女の体温が、じんわりと伝わってくる。

「ごめんなさい、あなたを驚かせてしまったわね。」リズは、少し照れたように微笑んだ。「あの投稿、削除されてしまったけれど、あの時、本当に…」

彼女は、言葉を詰まらせた。そして、隣に座るアザゼルに視線を向けた。

「アザゼルは、私の…そう、天使、なの。」

天使、と彼女は言った。しかし、目の前にいるアザゼルの姿は、私が想像する、純白の羽根を持つ、柔和な姿とはかけ離れていた。むしろ、どこか妖艶で、抗いがたい魅力を放っている。

「リズの告白、聞かせてもらいました。」アザゼルは、静かに口を開いた。「彼女が、私に惹かれたのは、おそらく、彼女の内に秘められた、純粋な魂の輝きに、私が共鳴したからでしょう。」

「魂の輝き…？」私は、訳が分からず、二人を見つめた。

「リズは、この世で一番、純粋で、そして…情熱的な魂の持ち主です。」アザゼルは、リズに目を細めた。「その純粋さゆえに、彼女は、この世のあらゆる美しさ、喜び、そして…快楽に、全身で反応してしまう。」

「快楽…？」私は、リズの、いつも明るく、そしてどこか奔放な言動を思い出した。彼女のSNSは、いつも「最高！」「サイコー！」という言葉で溢れていた。

「はい。」アザゼルは、微笑んだ。「そして、その情熱は、時に、この世の理を超えてしまうのです。」

リズが、私の手を取った。その手は、驚くほど熱かった。

「あなたに、話したいのは、あの夜のことなの。」リズの声は、少し上ずっていた。「アザゼルと…私は、言葉では言い表せないほどの、素晴らしい時間を過ごしたの。それは、ただのSEXじゃなかった。魂と魂が、絡み合い、溶け合うような、そんな感覚だった。」

彼女の言葉に、私の心臓は激しく高鳴った。リズ・オーシャンが、天使と、魂を交わすようなSEXをした。それは、あまりにも非現実的で、しかし、彼女の純粋な瞳を見ていると、嘘ではないと確信できた。

「アザゼルは、私に、この世のあらゆる喜びを教えてくれた。そして、私は、アザゼルに、私が持つ、この世の美しさを、全て捧げた。」

リズの顔は、陶酔したように赤らんでいた。その姿は、あまりにも官能的で、私は思わず目を逸らした。

「でも、それは…間違っていることなの？」リズは、不安そうに私を見た。「神様を…冒涜してしまったのでしょうか。」

アザゼルは、優しくリズの髪を撫でた。

「リズ、あなたは、何も間違っていない。あなたの魂は、この世のあらゆる美と喜びに、素直に反応しているだけ。それは、神があなたに与えた、特別な才能なのだ。」

「才能…？」

「そう。そして、あなたは、その才能を、私と分かち合った。それは、誰にも真似できない、奇跡のような瞬間だった。」アザゼルは、私に視線を向けた。「そして、あなたは、その奇跡の瞬間を、目撃してしまった。」

私は、言葉を失った。リズが、天使と、神をも超えるような体験をした。そして、その一部始終を、私は、今、ここで聞いている。

「リシ・キッティ、バニー・ラブ…」リズは、唐突に、二人の名前を口にした。

「彼女たちも、私と同じように、魂の輝きを持つ者たちです。」アザゼルは、穏やかに言った。「リシ・キッティは、スペイン最強の性欲美女。彼女の情熱は、大地を揺るがすほど。バニー・ラブは、サッカーも愛し、そしてSEXも愛する、純粋な魂の持ち主。彼女たちもまた、私と、魂の交歓をしました。」

「魂の交歓…」私は、リズの言葉を反芻した。

「あの夜、リズと私は、お互いの魂の深淵に触れ合った。それは、言葉では説明できないほどの、至福の体験でした。」アザゼルは、リズを見つめた。「そして、リズは、その体験を、あなたにも伝えたいと思ったのでしょう。彼女の純粋な心は、この世のあらゆる喜びを、分かち合いたいと願うのです。」

リズは、私の手を強く握った。

「あなたにも、体験してほしいの。この、言葉では言い表せないほどの、素晴らしい感覚を。」

彼女の瞳は、期待に満ちていた。その瞳は、あまりにも純粋で、私は、彼女の誘いを拒むことができなかった。

「でも…私は、そんな…」

「大丈夫。」アザゼルは、私の肩に手を置いた。「あなたは、リズの隣にいる。そして、リズは、あなたの隣にいる。魂は、触れ合うことで、より深く、より豊かになるのです。」

その夜、私は、リズと、そしてアザゼルと共に、言葉では言い表せないほどの時間を過ごした。それは、ただのSEXではなかった。リズの純粋な情熱、アザゼルの神秘的な力、そして、私自身の内に秘められていた、未知の感覚。それらが混ざり合い、私の魂を、かつてないほどの高みへと連れて行った。

夜が明け、カフェのテラス席で、私はリズとアザゼルに別れを告げた。彼らは、まるで最初から存在しなかったかのように、静かに、しかし確かな光を残して、消えていった。

私は、一人、カフェに残された。手には、まだリズの熱が残っていた。

「神様、ごめんなさい。」

あの夜、リズが口にした言葉が、私の胸に響いた。私は、天使と、そしてその隣にいた、謎めいた存在と、魂の交歓をした。それは、きっと、神の領域を侵すほどの、罪深い行為だったのかもしれない。

しかし、私の心には、罪悪感よりも、むしろ、清澄な感動が満ちていた。リズ・オーシャンの、あの無垢な輝き。アザゼルの、抗いがたい魅力。そして、それらに導かれた、私自身の、未知なる体験。

この出来事は、私の人生を、大きく変えるだろう。私は、もはや、以前の自分ではいられない。天使とSEXをした、という罪の意識と共に、しかし、それ以上に、魂の深淵に触れた、という感動を胸に、私は、新たな世界へと歩み出すのだ。

リズ・オーシャン。天使、アザゼル。そして、スペイン最強の性欲美女、リシ・キッティ。サッカー大好きHも大好き、バニー・ラブ。彼女たちの物語は、まだ始まったばかりなのかもしれない。そして、私もまた、その物語の一部となってしまったのだ。

神様、ごめんなさい。でも、私は、この、罪深くも美しい体験を、一生忘れないでしょう。