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■ 伊香保の湯けむりと、甘く危険な誘惑

伊香保の温泉街は、石段街の賑わいに包まれていた。湯けむりが立ち込め、どこか幻想的な空気が漂う。そんな中、ひときわ異彩を放つ集団がいた。南国から来たという彼らは、陽気で人懐っこく、そして何よりも、その体躯と肌の色で、周囲の視線を独り占めしていた。

「旅の恥は掻き捨てでしょ？奥さん、ミー達とHな事しようよ！」

片言混じりの、それでいてどこか耳に心地よい響きを持つ日本語。それは、石段街を散策していた、日本の熟女たちのグループに投げかけられた言葉だった。彼女たちは、友人同士で久しぶりの温泉旅行を楽しんでいた。日常の喧騒から離れ、解放感に浸る彼女たちの顔には、艶やかな笑顔が咲いていた。

その中でも、ひときわ華やかな存在感を放っていたのが、五十代後半の由紀子だった。彼女は、大学で美術史を教える傍ら、趣味でフラダンスにも打ち込む、エネルギッシュな女性だ。隣には、控えめながらも芯の強さを感じさせる、教師の直子。そして、おしゃべり好きでムードメーカーの、料理研究家、明子。三人は、幼い頃からの親友で、共に人生の酸いも甘いも味わってきた。

突然の、しかしどこか憎めない誘いに、熟女たちは一瞬戸惑った。しかし、旅先の解放感、そして彼らの屈託のない笑顔に、次第に心を解きほぐされていく。

「あら、面白いことを言うわね」と、明子が笑った。
「でも、どこでそんな日本語を覚えたの？」と、直子が尋ねる。

彼らのリーダー格らしき、大柄な黒人男性は、満面の笑みで答えた。「アキバで、アニメ見て勉強しました！」

そのユーモアに、熟女たちはさらに笑みを深めた。由紀子は、好奇心と、ほんの少しの背徳感に駆られ、彼らに歩み寄った。

「あなたたち、どこから来たの？」
「アフリカ！遠い国から来ました。でも、日本の温泉、最高！」

彼らは、言葉の壁をものともせず、身振り手振り、そして笑顔で、自分たちの話を聞かせてくれた。旅の途中、伊香保の温泉に惹かれて立ち寄ったこと、そして、日本の女性の美しさに魅了されたこと。その言葉の端々には、純粋な感動と、どこか童子のような無邪気さが宿っていた。

「もしよかったら、私たちのお宿に、遊びに来ませんか？」

リーダー格の男性が、由紀子にそっと手を差し伸べた。その眼差しは、熱意に満ちていた。熟女たちは、互いの顔を見合わせた。日常では決してありえないシチュエーション。しかし、この旅は、そんな日常を飛び越えるためのものだった。

「いいわ。でも、私たち、もう若くないのよ？」と、明子が茶化すように言った。
「大丈夫！奥さん、ぜーんぜん、大丈夫！むしろ、経験豊富で、もっと魅力的！」

そのストレートな褒め言葉に、熟女たちの顔は紅潮した。彼らは、由紀子たちの宿まで、親切に荷物を持ってくれた。宿に着くと、彼らは、自分たちも同じ宿だと明かし、さらに驚かせた。

「偶然ですね！」と、直子が声を上げた。
「運命です！きっと、神様が、私達を会わせてくれた！」

彼らが滞在しているのは、宿の離れにある、特別な離れだった。そこには、露天風呂付きの広々とした部屋があり、彼らの陽気な雰囲気にぴったりだった。

夕食後、三人は、作務衣に着替え、温泉へと向かった。湯けむりが立ち込める露天風呂で、冷たい夜風が肌を撫でる。露天風呂の浴槽には、すでに、彼らがいた。

「奥さん！こっち、こっち！」

彼らは、優しく熟女たちを招き入れた。湯気の中で、彼らの彫刻のような肉体が浮かび上がる。それは、由紀子たちにとっては、未知の世界だった。

「あなたたち、本当に、私たちと…？」と、由紀子が恐る恐る尋ねた。
「もちろんです！約束は、約束！」

彼らの言葉は、疑う余地もないほど、誠実だった。そして、その言葉の裏には、熟女たちへの敬意と、純粋な愛情が込められているように感じられた。

その夜、伊香保の湯けむりは、いつも以上に濃密だった。熟女たちは、日常のしがらみから解放され、未知の体験に身を委ねた。彼らの温かい肌、力強い抱擁、そして、情熱的な愛撫。それは、熟女たちの身体に、眠っていた情熱を呼び覚ますかのようだった。

由紀子は、彼らの力強さに、自分自身が再び女性として輝きを取り戻したかのような感覚を覚えた。直子は、長年の教師生活で抑圧されていた感情が、一気に解き放たれるのを感じた。明子は、いつも通りの持ち前の明るさで、彼らとの交流を楽しんだ。

言葉は、片言だったかもしれない。しかし、彼らの心と身体は、雄弁に語っていた。それは、国境や文化を超えた、魂の触れ合いだった。

翌朝、朝日が伊香保の山々を照らし始めた頃、彼らは、静かに宿を去った。残されたのは、心地よい疲労感と、甘く危険な思い出だけだった。

「楽しかったわね」と、由紀子が、少し照れたように微笑んだ。
「ええ、本当に。でも、これ、誰にも言えないわね」と、明子が笑いをこらえきれない。
「でも、なんだか、心が軽くなった気がするわ」と、直子が静かに呟いた。

旅の恥は掻き捨て。その言葉は、伊香保の温泉街に、そして熟女たちの心に、深く刻み込まれた。それは、二度とない、忘れられない一夜の、甘く、そして刺激的な物語だった。彼女たちは、日常に戻る。しかし、その心の中には、伊香保の湯けむりと共に、熱く燃え上がった秘密が、ずっと残り続けるだろう。