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■ 週末の残業

週末の午前10時。通常なら、妻と子供たちが賑やかに朝食を囲んでいる時間帯だ。しかし、今日の我が家は静寂に包まれていた。妻は友人との旅行に出かけ、子供たちはそれぞれ泊まりで遊びに行っている。一人残された私は、週末の解放感を満喫しようと、普段はできない「自分へのご褒美」を計画していた。それは、以前から気になっていた近所のカフェでのんびり読書をすること。そして、ついでに近所のスーパーでちょっと贅沢な食材を買い込み、夕食は一人でゆっくりと楽しむという、ささやかな大人の時間だ。

カフェに向かう途中、ふと見慣れた顔が目に飛び込ん込んできた。近所に住むママ友たちのグループだ。いつもは子供たちの送り迎えで顔を合わせる程度だが、今日はどういうわけか、皆で楽しそうにおしゃべりをしながら歩いている。その中に、特に目を引く女性がいた。A子さんだ。彼女は、いつも凛とした雰囲気で、どこか近寄りがたいオーラを放っていた。しかし、今日は珍しく、リラックスした表情で、他のママ友たちと親しげに話している。

「あ、〇〇さん！こんにちは！」

声をかけられたのは、B子さんだった。彼女は明るく気さくな性格で、ママ友たちの中でもムードメーカー的な存在だ。

「こんにちは、B子さん。皆さん、どちらかお出かけですか？」

「ええ、今日はちょっと、気晴らしにね。〇〇さんも、お一人なんですか？」

「はい、妻が旅行で留守なので、今日は自由な時間なんです。」

そう答えると、A子さんがニコッと微笑んだ。

「あら、それはいいわね。私たちの仲間に入らない？」

A子さんの誘いに、私は思わずドキッとした。普段、彼女とこうして親しく話す機会などほとんどない。しかも、皆でどこかへ行くという誘い。少し戸惑いながらも、好奇心が勝った。

「え、いいんですか？でも、どこへ？」

「ふふ、秘密。でも、きっと〇〇さんも楽しめるわよ。」

そう言って、A子さんは私の肩に軽く手を置いた。その指先の温かさに、私の心臓は早鐘を打ち始めた。

結局、私は彼女たちの誘いに乗り、一緒に歩くことになった。向かった先は、市街地から少し離れた、隠れ家のような雰囲気のレストランだった。店内は落ち着いた照明で、静かなジャズが流れている。テーブルに案内され、メニューに目を通す。しかし、私の意識は、目の前のママ友たちの会話に釘付けになっていた。

驚いたのは、彼女たちの話題の幅広さだった。子供たちの話から、恋愛話、そして…性的な話題まで、実にオープンに、そして具体的に語り合っていたのだ。私は、普段からそのような話題に触れる機会はほとんどないため、最初は戸惑いを隠せなかった。しかし、彼女たちの話は、決して下品なものではなく、むしろ、人生経験が豊富で、色々なことを経験してきたからこその、ある種の「達観」のようなものを感じさせた。

特に印象的だったのは、A子さんの発言だった。彼女は、ある経験について、淡々と、しかし情熱的に語り始めた。その内容は、私の想像を遥かに超えるものだった。彼女たちの「淫れっぷり」という言葉が、私の頭の中でぐるぐると回った。それは、決して下品な意味合いではなく、むしろ、世間の目を気にせず、自分の欲望に正直に生きる、ある種の解放感、そして強さのようなものを感じさせた。

「〇〇さんも、そういう経験、ある？」

B子さんが、ニヤリと笑いながら私に問いかけた。私は、顔が熱くなるのを感じながら、曖昧に頷くことしかできなかった。

その後も、会話は尽きることなく続いた。彼女たちは、私に様々な体験談を語ってくれ、時には、私自身の恋愛観や性的な嗜好についても、率直に尋ねてきた。私は、最初は戸惑いながらも、彼女たちのオープンな姿勢に次第に心を開いていった。そして、普段は決して口にしないような、自分の秘めた欲望や願望についても、少しずつ語り始めた。

レストランを出る頃には、すっかり日が傾いていた。彼女たちとの別れ際、A子さんが私の手にそっと自分の名刺を握らせた。

「いつでも連絡してね。もっと、色々な話、聞かせて。」

その瞳には、誘うような、そして何かを期待するような光が宿っていた。私は、ただ「はい」と答えることしかできなかった。

家に帰ると、部屋は静寂に包まれていた。しかし、私の心の中は、先ほどのママ友たちとの会話で、興奮と、そして少しの戸惑い、そして未知への期待で満ち溢れていた。彼女たちの「すごいドスケベ」という言葉が、私の脳裏に焼き付いている。それは、単なる性的な欲望だけではなく、人生を謳歌しようとする、ある種の「生き方」の表れなのかもしれない。

週末の残業。それは、普段の生活とは全く異なる、刺激的で、そして少し危険な香りのする、予想外の「ご褒美」となった。私は、A子さんの名刺を握りしめ、これから始まるであろう、未知の世界に、静かに、しかし確かな期待を抱いていた。